Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

【私のミステリな日々】2001年8月マーガレット・ミラー「心憑かれて」釣巻礼公「奇術師のパズル」モリー・カッツ「あなたの素顔は見たくない」

今年も8月になってしまった。6年前の夏はこんなことをアップしていた。

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マーガレット・ミラー 「心憑かれて」創元推理文庫 1990年 100円 定価 680円

The Fiend by Margaret Millar, 1964

9歳のジェシーは、母親エレン父親デイヴ、兄のマイクと四人暮し。親友のメアリー・マーサとは、家もご近所で、メアリー・マーサの母親ケイトは夫のシェリダンと別居中。ジェシーの隣家のヴァージニアさんは、子どもがいないから、留守がちの夫への淋しさもあって、ジェシーを可愛がって、色々ものを買い与えるので、エレンは気に食わない。ヴァージニアの夫も最近隙間風の原因が、ジェシーのせいだと思っている節がある。
ジェシーを物陰からじっと見つめるチャールズは、ロリコンの前科者で、兄のベンが保護観察者になって生活している。もちろん女の子達の集まる学校や、公園に近づくことは裁判所から禁じられている。
と、こういう舞台での心理サスペンスが展開する。チャーリーが、自分の衝動をおさへ兼ねて、煩悶、苦悶、煩悩の闇であがくうちに、ジェシーが行方不明になる。この行方を追うのは、ケイトの知り合いの弁護士マックこと、ラルフ・マクファーソン。
筋をこれ以上書くのはやめよう。解説が宮部みゆきで、異常心理ものについての短い解説を書いて、この「こころ憑かれて」といわゆる異常心理ものの違いを説明してくれる。そう、宮部みゆきの登場人物たちのこころと近いアメリカ人のこころの物語になっているのです。
宮部みゆきは、(「知名爆砕物語には」じゃなかった)「血なまぐさい物語には、ごく自然に人間をひきつけるものが秘められているからです。それが書き手であろうと、読み手であろうと」と書いてる。(池田小学校の報道の量見てると、この文章を思い出してしまう。)それだから、異常心理もののほとんどが、「『外』に向かって狂気を解放し爆発的な凶行に走るのとは対照的に、ミラーの描く『狂気』を抱えた人物は、みな『内』にむかって」、「コーヒーカップの底に落としこまれた角砂糖のように、じわじわと内部崩壊してゆく」と書いています。うん、この比喩、さすがですねえ。そうして角砂糖が崩壊して甘味が残るように、「ひそやかな祈りにも満ちている」
これ以上、この本について付け加える言葉なんかないですね。
まだ、絶版になってません。

◎釣巻礼公 「奇術師のパズル」光文社カッパノヴェルス 1999年 350円 定価848円

探偵役がスクールカウンセラーの棟谷志保子、助っ人が、隣中学の生徒指導担当教員の半沢。着任した中学の三年A組は、誰もカウンセリングに現れないが、事件の多発するクラスだった。昨年は、学年トップの女子中学生が川原で頭部打撲死体でみつかり、この三年になった日に、問題児の少年が保険体育の教師に説諭された後、頭部打撲で意識不明で見つかって、保険体育の乱暴教師が疑われた。
ついに、文化祭の前に、鍵のかかった体育館のなかで、美少女の中学生が毒死する。クラスの出し物の、四メートルの十メートル高さ二メートルくらいの、オブジェの中で発見されたのです。このオブジェの外には、人物が描かれていたが、その数が五人だったり、四人だったりと数が増減するうちに、このオブジェが燃やされ、文化祭は中止になる。
この密室トリックが謎なんだけど、パズル好きには、なあんだとわかってしまう、有名幾何パズルです。だから、著者は、「では、何故、誰が」という謎で、複雑な人の心の綾を織り出して、こちらは成功しています。
けっこう魅力的なキャラクターが多数登場します。登場するけど、描写してるストーリーに余裕がないのが残念。
問題があるとすれば、このトリックは、頭で考えると出来そうなんだけど、真犯人がわれてから、そのフィジカルタレントを勘定に入れると、ちょっと無理なんじゃなかろうか・・・というところですね。
暴力教師にぶん殴られて顔を腫らして、逆襲して、暴力教師を泣きながら蹴りまくる早瀬真琴という少女がいいです。中学生達の性格が歪みはじめるのは、一人を除いて、教師から受けたトラウマにあるというのは、なっとくしてしまいます。
その歪んだ教師たちが何故、大量に出てきて、同じような官僚たちが出てくるのかという分析も、徹底して物理的(食物)説明でしてしまう釣巻流も説得力あります。この志保子、半沢、真琴トリオで、また書いてくれないかなあ。

モリー・カッツ 「あなたの素顔は見たくない」文春文庫 1998年 100円 定価638円

Love, Honor, and Kill by Molly Katz, 1997

キャロンは、夫にふるわれた暴行の傷だらけで、19分署に駆け込んで、保護を求めたが、警官はその傷を見ても、まったく信用せずに夫に連絡した。彼女の夫は、トークショーのスターで国民的人気を得ているハリー・クラヴィッツだったからである。(この名前をレニー・クラヴィッツが読んだら、あんまり気分よくないだろうなあ)
家庭内暴力のレスキューセンターに保護してもらった、その夜、ナイフを持った男がベランダに侵入してきたが、キャロンは、手当たりしだいにものをぶつけて急場をしのぐ。
どうして、夫は知ることが出来たのだろう?警察内部のミーハー警官が連絡したとしか思えない。彼女は、義理の息子のジョシュア連れて、逃亡を開始する。
夫の知らない友人にジョシュアを預け、彼女は、ハリーの家庭内暴力と暴行が昔からひそかに続いているに違いないと推理して、ハリーの過去を探りにボロボロのオールズモービルに乗って、アメリカ大陸を走りまわる。
ハリーは、自分の番組で、脳腫瘍の女房が精神に変調をきたして、息子を連れて逃げ回っていると訴える。
彼女はハリーを信じるファンたちの目からも逃れて、調べ続けるが、外科医の彼女をメスで自殺に見せかけて殺せと、ハリーから依頼された殺し屋が次々と追いかけてくる。
彼女に有利な証言をしそうな親戚、元妻、彼女を弁護する恩師も、この暗殺者に次々に倒される上、うっかり、トイレで無け無しの六十ドルも万引きされて、窮地にたってしまう。
ここで、ハリーに昔はめられて二年間服役したことのあるジャーナリスト、ジャックがハリーの悪を暴きに彼女へコンタクトしてきて、二人は一緒に逃亡調査を再開する。
うん、このハリー・クラヴィッツの異常性格はちょっと書くのをはばかるくらい醜悪で、その犯罪歴も読んだ後思い出したくないほどひどい。でも、彼なりに、それを隠してなり上がり、自制して家庭を作ってきたのだけれど、仕事のストレスがかかると、先ず外で弱者を狩り、それもままならなくなると、身内へ暴力が向かうという末期的なもの。
カッツは、家庭内暴力カウンセラーが仕事でもあるから、このタイプの犯罪者の典型を、きっちり書いてみせた。(カッツとは逆に、そのうち、誰か男の作家が、妻の家庭内暴力をミステリーサスペンスに書くかもしれない。今書いたら、ブラックコメディにしかならないだ
ろうけど。)
でもとにかく、キャロンはハリーを刑務所の中へ放り込むのだ。それでもハリーのファンは、彼の無実を信じて刑務所へデモをかけるのだが、ハリーの方は、弱者いじめへの欲求ををこらえきれずに、ジャンキーの老人収容者を襲って、まともな心の収容者たちからリンチにあって殺され、やっとハッピーエンド。
それでもなお、ハリーの元秘書は実の娘まで犠牲になりかけたのに、ハリーの有罪を認めたがらず、家庭内暴力の被害者自身が家庭内暴力を認めたがらない心理パターンをなぞるように、物語は終わる。
久米宏とか、みのもんたとか、ビートタケシを、ハリー・クラヴィッツに擬してみても、今一つだなあ。ビートタケシじゃあ、異常性格者ぴったり過ぎるね(笑い。たけしさんごめんなさい)香取真吾あたりは、まだTOO YOUNG 。
to----------------------------------------------------kokomade.
選挙は安倍大敗でも、やめない。。。顔もヒトラー似だけど、それほど頭のよくない。性格も独裁者(家庭内の独裁者子どもがそのまま大人になってるだけだから当然か)ではあるが、独裁政治家になるには器が違う。商売人の家に生まれてたら、気がついたら会社潰れてましたか、人を見る目のある父ならばアパートマンション経営に転じて財産を相続させるだろうに。
アメリカだって似たようなものだ。カート・ヴォネガットが、ブッシュを陰毛と評して、こんな奴等と一緒に同時代を生きるのはうんざりと書いたが、その彼ももういない。
日米の腐り方は、もうどうしようもないのかなあ。
久しぶりに選挙に行って、なんか馬鹿コケにされた気分です。

ミステリ舞踏派久光