Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

【私のミステリな日々】9月上旬The Corpse In Oozak's Pond 「ウーザック沼の死体」by Charlotte Macleod 風野真知雄 「ふうらい指南」「雨の刺客」「ふうらい秘剣」

たまたまポケットに文庫がなくて、見知らぬ本屋で一冊買ったら、おお、これいい。。。と、風野真知雄のふうらいシリーズを三日連続で読んでしまったのです。

◎シャーロット・マクラウド 「ウーザック沼の死体」扶桑社ミステリー1989年、定価500円、200円

The Corpse In Oozak's Pond by Charlotte Macleod, 1987

ラクラヴァ農業大学栽培学教授ピーター・シャンディシリーズの・・・ええと何作目だろう?とにかく、また新たなるケイスブック。
真冬に雪の中からモグラを冬眠からたたき起こして新年の収穫を祈念するお祭りの真っ最中に雪の中の沼に奇妙な死体が浮かんでいた。古い衣装と付け髭の見知らぬ男で、もちろん祭りは吹っ飛んでしまい、ヴァイキングの総長みたいな学校総長からは、シャンディに事件究明の命令が下り、これ幸いと、保安官もシャンディの助手になってシャンディをつつきまわす。おりしも、この沼
一帯が昔の地主の賭けの結果、古い一族の末裔に相続されていて、大学は、買い取るか、引き渡すかという二者選択をせまられて、こちらも大問題になりかけているという状況。
引き上げた死体を見たシャンディは、大学創立者のパラクラヴァ死の銀塩写真の100年前の衣装にそっくりと思った。死体がパラクラヴァの子孫の一人に似ているという意見も出たが、30年以上誰も見たことも無く生死もはっきりしない上、沼近くに暮らしている姉妹からは目の色が違うと否定された。
この訴訟を起こしていた老夫婦が急死して、シャンディの山勘どおり、自家製ウイスキーには四塩化◎◎という毒が混入されていたことが判明して、一気に殺人事件が3つになってしまい、この事件の解決もまた、シャンディ!
さっぱり犯人を突き止められないシャンディに圧力をかけるために、保安官が取った作戦は図書館長の逮捕。おかげで、シャンディの妻は図書館事務を一手にひきうけるはめになり、もちろん妻からも圧力がシャンディにかかった。つまり食事当番がシャンディにまわってきたのだ。これではなんのための結婚ぞ!ってわけ。
とまあ、なぜ、古い衣装で死んでいたのか、死んだのは誰かをシャンディはつきとめて、犯人とそのグループを暴き出す。
あ、これは第6作です。

風野真知雄 「ふうらい指南」コスミック時代文庫 2005年 552円+税

火盗改め一の剣の鬼、矢沢冬馬が捕物の最中に味方の同心から斬りかかられて反射的に切り殺した件で、隠居して三ヶ月、もっぱら釣三昧の日々だった。
そこへ昔の同心仲間で冬馬と竜虎と呼ばれた道場主早田から、草刈鎌と御前試合する若者の特訓を一月でと頼まれるのをきっかけに、武芸百般に通じる
冬馬はふうらい指南業を開始する。ただ、個人教授でしかも、弟子が練習している間、冬馬は釣をしているのである。
対草刈鎌には壁打ちテニスのように、右手で投げた球を壁にぶつけて左手で受ける練習。これは塚原卜伝の秘伝にあるのだそうだ。最後は舟から石垣にぶつけて受ける。これでめでたく最初の弟子は成功する。
二人目は、芸者を辞めて手習い師範を始める30女のおあき。合気を手ほどきしたところ、元の恋人のストーカーの若旦那を投げ飛ばすまでに上達。
三人目は団子屋に柔術と沖縄短棒術をおしえて喧嘩に勝たせた。
四人目は剣の修行に出てきたのに、釣に夢中で江戸留学期間が終わりかけているものに、一夜漬け剣法を教えたら、これで剣術に夢中になって、留学を延長する若者。
五人目は父子そろっていじめられっ子というのに、弓術を教える。
六人目は役者の松之助に舞台で映える剣の振り付けを教えているうちに、火盗改めの現役から手裏剣で狙われて返りうちにする。どうも火盗改めに冬馬を何かの理由で排除したい勢力の手先がもぐりこんでいるようであるというところで、シリーズ第1巻は終わる。

風野真知雄「雨の刺客」コスミック時代文庫 2005年 552円+税

釣をやっている冬馬のそばに空の馬が走ってくる。馬から落ちたのは大名家の若殿だった。同じ大名の若殿と賭けをしたので、馬術指南を頼みたいという話になり、愛宕山の石段を半ば気絶しながら駆け上がらせて見事勝たせた。賭けの賞品は朝顔の種だったというのが一人目。
二人目は蝶の秘剣の破り方を教えて欲しいというもの。知らないものも教えた(笑い)が、弟子は空しく秘剣使いに破れ、冬馬も風邪で倒れてしまう。初めての挫折である。見舞いに火盗改め長官が現れ、改めて凶盗の探索の協力を依頼される。
三人目は、魚屋に棒術を教えて、ある屋敷の中間と渡り合えるようにしたらその中間が行方不明になる。その犯人が蝶の秘剣の使い手だった。冬馬は弟子の敵を見事に取る。
四人目は、懐剣の使い方を教えることになるが、実はその女は土井垣藩の家老が送り込んできた刺客だった。ここで、敵がはっきりと姿を現しはじめる。それにしても、悲しい女刺客の最期のせりふです。
「心が壊れてしまいましたから」
五人目は、団子屋の知り合いの家に毎晩幽霊が出るので、幽霊を切る剣を教えてくれと団子屋が頼んできた。こっけいな事件の間に、火盗改めの同心が切られて、「早田にやられた」と言い残した。冬馬が早田の道場へ駆けつけると早田は道場を譲って失踪していた。関西に急に成長した酒屋の正体をさぐりに出張した冬馬の息子を狙って早田が現れ、冬馬は人生最強の敵と剣を交える。
六人目は地方から出てきた花火職人にボクシング風唐手を教える。この花火の夜に、テロを仕掛ける凶盗酒屋のたくらみを冬馬はこの二巻目の登場人物総出で迎い打って挫折させる。
二巻目はややシリアスな陰が強くかかってきてますね。

風野真知雄「ふうらい秘剣」コスミック時代文庫 2006年 524円+税

一人目の弟子がいきなり殺されているところへ冬馬は到着する。しかも冬馬の腰のものには血がついていた。でも、ここで登場するのが第三巻のバイプレイヤー八丁堀同心須田剣一郎。おかげで、牢入りすることもなく、按摩に居合いを教えることができた。
二人目は須田の下っ引きの佐之吉に縄術を教えた。佐之吉はその縄で橋から身投げしかけた娘を助けた。二巻目の蝶の秘剣の弟子、この巻の最初の弟子と暗雲がかかってきた指南業に明るい陽がここでさしてくる。
三人目は、浮世絵師が絵の中の武器の書き方の指南を求めてやってくる。木刀で冬馬は型をやってみせ、絵になる構図を探すという教授である。
四人目は、冬馬が女隠居からお金を貰ってお茶の弟子になる。のんびりしてるうちに、佐之吉が切られた。再び、黒雲がどす黒くかかり始める。
五人目は秘剣山の声を完成したいと訪れた死病を抱えた老剣士。完成させることなく、冬馬は教授を終える。その後、須田と冬馬は、若い剣鬼を追い詰めて佐之吉の敵をとる。そのやり取りの中で、冬馬は秘剣山の声を完成させた。

この三作でどうやらこのシリーズはおしまいらしい。文庫書き下ろしシリーズは新しいシリーズが始まって、新作は出ていない。このままでもいいような。もっと読みたいような。
そう神林長平の「敵は海賊」シリーズみたいに、スキですねん。

ミステリ舞踏派久光@しかしまあ、暑いこと。予報では、盆休み以上に来週はなるかもしれないという。まいったなあ。