Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

002 原泰久 「キングダム 22」 集英社 2011年 514円プラス税

◎「キングダム 22」 集英社 2011年 514円プラス税

表紙が血まみれで今まさに膝から崩れ落ちかけるキョウカイを抱きとめるシンの絵です。
いやあ、映画ボディガードのCDジャケットのWhitney Housotnをお姫様だっこをしているKevin Costner の図みたいですね。両方とも土砂降りの雨の中。やはり、音楽はI Will Always Love You ですね。この曲書いたのはDolly Parton. さすが、Connie Talbot では、この表紙には10年早いかなlol.

原作品(原作の品ではなく、原の作品です)では漢字のキャラクタの人名を全部カタカナにして書くのは、これがフィクションだということを強調したいからとご了解ください。
弱冠16歳にして、古代中国秦軍の三百人隊長に率いる飛信隊とともにのし上がったシンがのぞむ最初の大戦が、秦による魏への侵攻作戦で、秦軍総指揮大将軍はニックネイムが白老のモウゴウ。同僚300人隊長として、一つ年上のモウテン(モウゴウの孫で司馬遷史記の実在人物)、槍の天才同じ年のオウハン(こちらは秦の歴史的名将オウセンの実在の息子)。対する魏軍は、元は趙の無敵万能大将軍レンパが率いるレンパ四天王中心の大軍。
モウゴウの作戦は本陣を守備に徹して固めて魏軍本軍主攻(四天王のうちのゲンポウ、リンコ勢)を受けてるうちに、カンキ副将の右軍かオウセン副将の左軍が、それぞれ魏軍の左右軍(対カンキは四天王筆頭のカイシボウ、対オウセンは中華十弓とたたえられる弓名人キョウセン)を打ち破って、敵本陣を落とすというものだった。
カンキの活躍で(原のフィクションでは群盗あがりの変態サディスト、実像は、秦始皇帝の中華制覇で他の6国のうちの一国を取って見せた猛将だったんですが、まあ、そこらへんがフィクション)カイシボウ重騎兵歩兵軍団を釘付けにした上、四天王の頭脳のゲンポウを討ち取ったものの、オウセン(これも自己中の権化みたいな戦巧者に描かれておりますが、秦のライバル6国のうちの3国は、このオウセンが滅ぼし、司馬遷に晩年を功名のうちにマットウした稀有な武将と書かせた、軍才は最強だったんじゃないかと思われる武人です。とにかく原も書いてるように勝算が立たないときは絶対無理しなかった。。。のは事実のようです)が、キョウセンとレンパの二人がかりに押し込まれて、後方深く土城にこもってしまい、モウゴウの左軍はないも同然のはめに陥る。そこで、レンパは手勢をひきいて、モウゴウ本陣を背後から攻めにかかり、リンコ率いる正面軍は上杉謙信の車懸かりみたいな攻めで本陣守備軍を鎧袖一触にぶちぬきにかかったところで、いよいよ秦軍本陣の最後の砦、飛信300人隊は千人隊に増強されていたのだが、そのうちの800人を率いて、シンはリンコ軍へ突入していく。残された200人は重傷兵からなる隊で、中華一の(ひょっとして中華四千年で一番かもしれない)天才剣使いの美少女キョウカイが負傷を抱えながらまかされていた。
シンとリンコの一騎うちが他者を寄せ付けないすさまじさで続く間に、レンパはモウゴウの背後から襲いかかった。モウゴウは(モウゴウだって、原設定のような凡将だったわけでもなく、秦の天下統一戦では2カ国を征服してる名将ですから)四十年間レンパを研究しつづけて、索をねった迷路砦を構築してレンパ勢を迎いうち、ほとんどレンパを討ち取るかに見えた。。。というのが21巻までのお話。実はレンパの読みが優って、モウゴウは勝てぬを承知の一騎うちに出るはめになる。
で22巻の当巻で、満身創痍でシンはリンコを討ち取ったのだが、気がつけば残していた二百名とキョウカイの姿が見えない。リンコはカイシボウから廻してもらった最強重騎兵500を、シンがリンコとぶつかり合った隙をついて、突入させていたのだった。傷の手当てもそこそこにシンは馬をはせて激戦のキョウカイ隊の姿を求めて走る。壊滅している秦軍守備隊と飛信隊留守部隊と敵の巨人兵士達の死体の間に一人だけ陽炎のように立ち続けていたのがキョウカイ。ほとんど一人で、500人を葬ったと息のある負傷兵たちが証言した。意識が飛んでいるキョウカイへシンが駆け寄って、抱きとめる。
それが表紙の図。
まあ、キョウカイさえ無事なら、あとのストリーなんかどうでもいい。(オイオイlol)
というので、後は、補足でながしましょう。
カンキが魏軍本陣を奇襲して魏の総大将なんとかを討ち取ったのがレンパがモウゴウにトドメをササンとして間にモウテンとシンが立ちふさがり、ぼこぼこになりながらも(既にリンコにズタズタにされているというのにタフな少年です)時間を稼いでいた間のこと。レンパは、あっさり負けを認めて駆け上がってきたカイシボウに
「止めじゃ!」「帰るぞ!」「ワシらの負けじゃ!」とモウテン、モウゴウ、シンを唖然とさせたところで22巻目は終わる。 
まず、モウテンというのも、これも史記の英雄将軍で、始皇帝政が一番信用した文武に秀でた将軍だったようです。毛筆の発明者はモウテンという伝説もあるくらい。シンのモデルと思われる李信というのは、どうやらモウテンの副将的若手将軍だったようです。
レンパは趙を出てからは、史記によれば実は一度も戦ってないんですね。この魏の後は、楚に亡命しているのですが、年齢も年齢だったし、また魏にしろ楚にしろレンパを信用してはいなかったようで、兵権をあたえたりはしなかったようです。ま、レンパの後に趙軍を総指揮したリボクってのが、これが中国4千年でも五本に数えられる軍略家の英雄ですから、うっかり兵権を託したあとで、リボクとレンパの共闘なんてされた日には、あっという間に秦以外の国では征服されかねないといったところでしょうか。
ただ舞踏派は、このレンパが後にまた亡霊みたいにでてくるんじゃないかなと思っています。というのも、後年、秦が楚へ出兵するときの総司令が若手ナンバーワンの李信将軍と副将がモウテンなんですね。オウセンが20万ぽっちの軍勢では自信がないといって、辞退隠居してしまった後、オウセン爺さん耄碌したなと若手の李信が20万で十分と楚へ侵攻するんですね。連戦連勝でいるところで、一転隙をつかれて、李信は部下の将軍をずいぶんと討たれて逃げ帰る。いっしょに出撃してたモウテンは別軍で動いていたからほとんど無傷でもどり、今度は始皇帝がオウセンに頭を下げて、言うとおりの70万の軍勢を与えて楚を滅ぼす。。。という話があるんです。李信はそれで失脚したわけではなく、中華制覇後はモウテンと協力して対匈奴戦で連戦連勝を重ねる。
その李信がシンだとすると、楚での敗戦は、仲が相変わらず今ひとつのオウハン(モウテンなんだけど、それだと史記に書いてあるほとんど連携もなしの作戦行動がうまく説明つかないから、ちょいと創作してオウハンにしちゃう)と、せっかくの20万を半分ずつに連携もなく運用してるところを、小僧まだまだじゃわいとレンパ爺さんが現れて、シンにお灸をすえてくれるという流れになるのではないかと。で、その戦いの後にレンパも寿命がつき、それを確認したオウセンがオウハンをつれて楚へ侵攻する。。。または、老いてもまだ最強の武を維持していたレンパにシンが夢中になって、リンコと一騎うちしたように、一騎うちをしてる間に、生き残りの四天王のカイシボウとキョウエンに十万の大軍も粉みじんにつぶされていた。。。とか、原フィクションともぴったり整合すると思うんだけどなあ。でも、今のストーリーの進みぐあいでは、レンパが再登場するとしても五、六年は先の話かもlol
リンコという発音の武将はずっと後世に一人いるところが中国4千年のすごいところですが、この時代のリンコは原の創作。キョウカイは女じゃなかったかもしれないけど、史記実在の秦の将軍に名前が見られます。。。ただ出てくるのはなんとオウセンの副将としてなんだよね。だから、ここらへんは原フィクションではどうなるのか楽しみ。すんなり、シンの女房におさまってもいいんだけどなあ、中国の女将軍伝説はいっぱいあるから。
ま、そんなところでしょうか。ただ、日本でも中国でも、騎馬白兵戦の一騎うちなんてのはフィクションで、ほとんどは矢合戦でけりがついたようです。でも、マンガですから、絵になるのは、武人どおしの剣の叩きつけ合い。。。原の画力のすさまじいこと。
(最初に書いたときはここに舞踏派選抜中国十大武将リストが入ってたんだけど、文字化けして、全体が読めなくなっちゃうのだ。なんか、はてなってところは多国語混在文章を受け付けないガラパゴス設計なんですねえ。)
(別に舞踏派が中国の史書全部読んだわけではなく、日本に「中国武将列伝 上下」田中芳樹著というのがありまして、この百人の中から十人選んだだけです。この百人みんなすごいんですよ。あの虚名の大軍師諸葛亮なんか最初から外されてるくらいの武人ども。日本で名誉招待されるとすると、せいぜい上杉謙信くらいでしょうか。あとは、世界戦略をちらりとうかがわせる独眼竜伊達政宗くらいかな。)
田中さんが中華史上百将を選んだときに、レンパ、リボク、オウセン、モウテンを入れたくらい、この四人ビッグネイムなんですよ。さてシンはそれ以上にでかくなるのか。何せ、中国人の選ぶ史上最強の岳飛の飛と史記最強の韓信の信をもらってるんだから、名前だけなら中華四千年最強なんです。はい。
あ、ちょっと力はいりすぎて長くなった。原の画のせいかlol
本当は、秋乃茉莉の「華佗風来伝」とペアにするつもりだったのだ。

キョウカイ戻ってくるのかなあ。
↑こっちのリンクはドリー・パートンのオリジナルです。