Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

005「リバース エッジ 大川端探偵社」原作 ひじかた憂峰 画たなか亜希夫 日本文芸社

ちょっと、変わった比較実験をしてみた。あんまりこういう作者への無礼な個人的評価ごっこはしたくはないんだが、なかなかおもしろそうだったので、やってみた。マンガのシリーズが28作になって、3巻になってでている。その巻1の1作目と巻2の10作目、巻3の20作目と巻1の2作目。というように組み合わせてどちらがおもしろく自分に思えたかで勝ち抜き戦をやってみたのだ。
一回戦は、巻一から5作、巻2から7作、巻3から2作が生き残った。巻2でシリーズが充実して、巻3でマンネリ化がはじまってるような風にもみられるが、この勝ち残りでまた同じように勝ち抜き戦をしてみた。
2回戦は、巻1から2作、巻2から3作、巻3から2作と、好み度合いが高いのが平準化されて、簡単にマンネリなんていえないなと思い直した。
その生き残った7作について書いてみよう。

FILE. 20 決闘代打ち

第三巻の冒頭のカラー作品で、筋はあるヤクザの組の仲の悪い幹部が親分の妻の葬儀の最中に喧嘩をはじめた。怒った組長は、二人に決闘して「ガチで殺し合いやがれ!!」と命じた。大川端探偵社のはげ頭ヤクザ顔の60男の所長に依頼に来た大幹部は、「猛暑のせいだ。誰も彼もが“狂犬”みたいなオーラを・・・・・・」と説明して、結局、決闘の代打ちを雇って勝負するということになったので、死人が出ないように所長に見届け人=レフリー役を依頼したいと言った。片方は、バズーカ砲使い、片方は鎖鎌の達人。所長は、「断れませんな。おたくの組長には義理も恩もある」と引き受けた。
うん、この荒唐無稽さは、確かにマンガならではの世界です。で、決闘の結果は、本買ってくださいな。LOLOL.

FILE.11 純愛

依頼人は、ある名家出身で、現在未亡人の年齢不詳の美女とその運転手。アルツハイマー気味で説明ができない未亡人に代わって運転手は、昔、奥様が結婚する前に見知らぬ青年から「告白」を受けたことがあると言った。彼女は、その青年が誰だったか、何ものだったか知りたいと思っているというのである。彼女が覚えているのは、大川という苗字と、「なにか・・・・・・とても清潔で繊細な印象だけが強烈に・・・・・・」だけなのである。
所員の三十歳くらいに描かれている村木たけしは、あっさりと青年の正体を突き止める。いまは浅草にはない酒店の息子だった。が、彼は若くして亡くなっていて、両親は心当たりがなにもなかったが、青年の妹が両親にも見せないで彼の日記を持っていた。妹はそれを村木に預けた。
村木がバーKURONEKOで所長に報告する。「早死に というか早世を予感していた人間にしか書けぬような・・・・・純情詩集・・・・じみた日記でした。」その日記を未亡人が読んで顔も、最初で最後だった告白の言葉も思い出したと村木に電話してくる。
その大竹青年が若き日の未亡人に告白した言葉は、
「お慕い申し上げておりました」

FILE.04 怖い顔グランプリ

「美人秘書」のメグミちゃんと寝起き頭の村木とはげ頭の所長がウサギの耳をつけてはしゃいでいるところへ、ド迫力の怖い顔の中年男が依頼者として現れた。アラブゲリラのごときギョロ目に太い眉、大きい鼻に強いヒゲ面のパン屋だった。最近、この顔がアルカイダのパン屋なんて陰で呼ばれて営業に差し支えるようになったので、噂で聞いた「怖い顔グランプリ」という大会にでて、笑い話に変えてしまいたいので、是非大会を見つけて出場できるようにして欲しいという依頼だった。「たとえ優勝は無理でも出場写真くらいは額縁に入れて店内に飾ってしまえば、笑い」となるだろう。
所長は裏社会人脈ネットワークでなんなく、大会を見つけた。ある警備会社が強面の警備員をスカウトするために年二回開いてる裏の世界のイヴェントなのだという。パン屋は、スーツのヤクザスタイルで登場、優勝はしなかったが、見事入賞、もくろみどおり店に写真を飾って、イメージチェンジに成功した。まあ、この大会の様子がたなか亜希夫の筆力で怖くてユーモラスな8頁になってるのですね。うむ、確かにマンガの可能性を最大限に見せてくれます。

FILE.05 その人は今・・・

依頼者は、元四回戦ボーイのボクサーあがりのキャバクラチェイン店の40才ほどのオーナー。秘書のメグミちゃんに、
「おっ ケバくてエロいお姐ちゃん。金に困ったら連絡してよ」と名刺を渡してスカウトにかかるような軽さ。その男が、昔からずーっとヒーローとしておっかけていた「かませ犬」松永五郎、通算戦績7勝28敗、将来は世界チャンピオンと期待された有望新人を三人もつぶしたという逆伝説の男をさがしてくれ、というのが依頼。
「俺は、オレみたいなチンケな奴があんたのおかげで頑張って成功したんだ・・・・・・そう言ってサインしてもらいてえのさ」
さんざん所長と村木が探し回って、あきらめかけたとき、メグミちゃんがネット検索で見つけてしまった。なんと「逆・伝説ボクサー松永五郎の店」というホームペイジがあった。LOLOL.
キャバクラ経営者はアル中から立ち直ったかませ犬ボクサーの手を取って念願を達成する。

FILE.15 依頼者は所長

唖然とするメグミと村木に向かって所長は依頼する。「どうした 俺が依頼者だ。誰かに恨まれているみてえなんだ。ひとり住まいの俺の部屋にくだらねえイヤガラセ・・・・・・鍵穴を接着剤で開かないようにされたりとか、二度や三度じゃねえんだ。。。ベランダに道路から生ゴミを投げ入れられたりな」
というので村木は一週間所長を尾行調査後、結論を出した。原因は、所長のなじみの定食屋のアルバイト店員の女の子が、所長だけに笑顔で応対して、他の客には無愛想な表情で接することだった。彼女をアイドル視している「いわゆるパッとしない男たち」の誰かが所長に嫉妬しているのだというもの。
「わかったもういい。俺があの定食屋に行かなきゃいいんだろう」「ああ俺もパッとしねえ男だ。 あの子に惚れてたのかも・・・・」

FILE.27 アイドル・桃の木マリン

50前のサラリーマンが依頼者で、彼が高校生のころデパートの屋上で生で見た一枚のシングルを出して消えたアイドルを探して欲しいというもの。三十年の時を隔てたアイドルさがし。
こうなると、所長の裏人脈ネットワークが活きてあっさり見つかった。所属していたプロダクションのオーナーは、マリンはトラックの運転手をしていると村木に言う。村木は桃の木マリンに依頼者とあってくれるよう直談判に出張する。本人を見て、村木は唖然呆然。その様変わりように驚く。それでもマリンは依頼者にあってくれることになり、依頼者もまた、元オーナーの「だがなあビックリするぞ。サプライズってやつだ。まあ会えばわかる」という言葉通りになる。その依頼者にマリンは昔の持ち歌を振り付けつきで歌ってみせた。
え?どんなサプライズ?それは本買って読んでくださいな。たなか亜希夫の絵とともに人生の妙、魔術ってのを十分にサプライズできますよ。

FILE.18 ある結婚

依頼者はデリヘル嬢。彼女の現れ方がいいんですねえ。メグミちゃんが、メイドの格好して所長と寝起きの村木の目を丸くさせているところへ、あらわれて「あんたみたいな可愛くてイケてる子よりも、あたしみたいなブスのほーが、コスプレは決まるんだよ。ほら」メグミの感想、「プロっぽーい」。所長の感想、「テレビで見たまんまだ」
依頼は、最初のときは「客」だったけど、二度目からは月に一度日曜日に買物をいっしょにするだけの客からプロポーズされたのだという。その客が何考えてプロポーズしたのか知りたいという。
村木は、相手の男がキャリア官僚なのに、「なぜかその男の『暗さ』と『純度』に共感してしまった。」普通の尾行調査ではらちがあかないと、村木は正体を明かして呑み勝負にかける。泥酔しない限り本音は聞けぬと。
酔いつぶれたキャリアは、その思いを告白。村木は「泥酔のせいだろう・・・・涙があふれた・・・・」
KURONEKOの50女(婆様です外見は、もう80くらいの)と所長がペアになり、村木とメグミが組んで、親戚のいないデリヘル嬢の身内役で結婚式に参列する結末。
所長はつぶやく。「まあな世間の連中の恋愛なんぞはほとんど錯覚か打算か性欲みてえなもんさ。 男と女が劣等感を交換(シェア)して結ばれた。。。。フツーの夫婦よりうまくゆくぜえ・・・・・・・多分」
村木は答える。「ウイッス」
舞踏派もうなずく。゛Oui!”

ひじかた憂峰って、新人じゃない。狩撫麻礼だったんだ。とすると、ずいぶん長いつきあいだなあ。
その原作を磨き上げてるのがたなか亜希夫の画なんだが、ほんとこれはすごい絵です。
ミステリ舞踏派@書きたいのはいっぱいあるのに、書くスタミナがなくなったなあ・・・・