Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

014幡大介「公事師 卍屋甲太夫三代目」:主人公を食ったトリックスター登場

年末です。28日まで仕事があったので、29日は終日布団の中で眠り虚仮。30日の今日になって、やっと書く時間がとれました。というより、ブログ記事を書く気力が戻ったと言う方がただしいかな。とにかく、この夏以来、体調不良気味を通り越して、ほとんど病気にもかかわらず、貧乏暇なしに仕事に出かけざるをえなかったから、夜はほとんど帰宅即就寝、朝は一応早朝に目覚めてはいるものの、布団の中で文庫・マンガをぼんやりと読んでいるような無気力状態だったのですね。ぼうっと、読むだけなら、エネルギーは消費しないもん。lololol

幡大介「公事師 卍屋甲太夫三代目」幻冬舎時代小説文庫 2012年 幻冬舎 定価648円+税

江戸時代の民事裁判公事の半民間検察官弁護士兼務業務みたいな公事師の江戸きっての名門宿、卍屋の跡取りは男でなければ、公事師仲間からも勘定奉行所からも認めてもらえないのだが、二代目が倒れて見ると一人娘のお甲しか実子がいなかった。となると、お甲が婿をとるしかないのだが、お甲には勘定奉行所与力の恋人がいた。身分違いすぎて、妻にもなれず、まさか与力を婿入りさせることもできないが、公事を仕切らせたら江戸一の切れ者のお甲は公事も、恋もあきらめられない。そこで、居もしない三代目を恋人としめし合わせてでっち上げた。
そこへ、卍屋に煮え湯ばかり飲まされる、やはり公事宿車屋の主は、正体不明の三代目という隙をついて、公事師仲間の承認が得られる三代目として、自分の次男坊のぼんくらを養子にねじ込もうと策をこらす。その間に飛車屋は三代目名代のお甲に公事で連敗して、ますます卍屋のっとりを急ぎ始める。つまり、偽百姓に架空の訴訟を起こさせて、勘定奉行所での吟味最中に対方の飛車屋が訴えた百姓達が架空存在だとあばき、偽百姓たちは止める間もなく奉行所からトンズラして行方不明になれば、卍屋の責任問題になり、闕所のうえ、江戸から所払いになりかけるのは必至。そこで、飛車屋が、まだ公事師仲間からも未承認(二代目が再起不能でも病気療養中)の正体不明の三代目を欠格として追放し、改めて自分の次男を婿入りさせて三代目とし、飛車屋が後見につくので卍屋を存続させてほしいと奉行に、公事師仲間(もちろん買収して)とともに訴えて卍屋を存続させる。つまり乗っ取ろうという絵を描いた。
卍屋との公事で負けて痛い目にあった江戸・関東裏社会のヤクザ・ゴロツキが飛車屋の作戦に全面協力して、お甲もこれまでと思ったところへ、トリックスターが躍り出る。
このトリックスターというのが、物語冒頭で卍屋の公事宿の手代チーム(もちろん率いるのはお甲)が、村同士の水争い公事の証人を江戸まで送り届けようとするのを強襲し、奪い返して、公事の証人出頭不可能に持ち込み、証人不在で論証不足だと公事をながしてしまおうという飛車屋の陰謀作戦暴力実行チーム(お甲に見破られて、逆襲されて失敗するのだが)に加わっていた流れの詐欺師の『いかさま師』。(なぜ「いかさま師」と呼ばれるかというと、やはり同じ闇討ちギャングに加わっていた用心棒浪人榊原が、名前なんか知りたくもないと「いかさま師」と呼び続けたことによる。)そのいかさま師がお甲絶対絶命の土壇場で、俺が三代目だと名乗り出て、飛車屋の仕掛けたヤクザチームを榊原の協力でぶちのめして証人として連行してきて、飛車屋の悪事を表に出し大逆転。こいつは何者と唖然とするお甲の前からイカサマ師はさっと姿を消してしまうのだが、シリーズ第一巻の最終章で、寝たきりの二代目の枕元へイカサマ師は現れる。
Kokokara-----------------------------------------
「さすがは甲太夫の親爺さんだ。寝ついていても、まったく油断はございませんねぇ」
「お前ぇか?・・・・・・」
「へい。手前でございますよ」
「・・・・・・いってぇ何をしに、江戸に戻って来やがった」
「へい。 お約束通りに、お甲ちゃんを守るために、戻ってきたのでございます」
「何が約束だ」
「おっといけねえ。手前なんかとくッ喋っていたら、お身体に障る」
to -----------------------------------------------kokomade.
地の文を略して会話だけ並べたのだけれど、このあと、
トリックスターいかさま師は、最後まで名前が明かされることもなく、
「案じることはございません。お甲ちゃんは、きっとあたしが守り立ててご覧にいれましょうから」
と静かにに障子をとざして消える。
まあ、実に二巻目が待ちきれないクロージングではありませぬか。

最後の一行はこうだ。

雪はしんしんと降り積もる。庭からは、なんの物音もきこえてはこなかった。

うわあああい、幡さん、幻冬舎さん、次を・・・・・次を、早く読ましてくれええええええええい。