Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

【comics】田村由美「ミステリと言う勿れ」秋乃茉莉「ワトソンの陰謀3」萩尾望都「ポーの一族 春の夢」「ポーの一族 ユニコーン」

田村由美ミステリと言う勿れ1」小学館 2018年 「ミステリと言う勿れ2」「ミステリと言う勿れ3」「ミステリと言う勿れ4」

確か、田村由美という名前は「バサラ」とか言うのを書いてたなあという記憶があった。絵柄は嫌いなタイプじゃなかったが、この表紙の主人公の絵はCGを多用して、かなり印象的に見えた。

主人公は久能整、整と書いて「ととのう」と読む。大学生だが、4巻読んでも(はまったってことですな)いったい何が専攻なのかもわからない。それが、いきなり、親しくもない同級生の大学生の殺人事件の犯人にされる。目撃者もいて、主人公の指紋付きのナイフが出、しかも部屋の家宅操作で借用書まで出てくる。

ここまで(冒頭の30ページほど)読めば、普通のミステリ読みなら、目撃者、証拠そろえられるものが主人公の敵方にいるとわかる。とすれば怪しいのは彼を犯人と決めつけて白状しろとせまってくるものが怪しいと山勘が働く。まあ、そこでミステリの興味は失せるんだけれど、主人公がそこからどう弁明して冤罪をかわしてみせるかというサスペンスの方へ興味が移る。問い詰める警官相手に、おしゃべりを仕掛けて、刑事たちの私生活を推理論証しながら、自分のペースに巻き込んでいく。4巻徹頭徹尾、一人芝居のモノローグみたいな語りで、久能の舞台を観させられることになる。心を材料にした手品を見させられるような久能の言葉芸に魅せられて、次々と買って読むはめになる。

秋乃茉莉ワトソンの陰謀3」株式会社ぶんか社2016年

すでに二巻が出ていて、シャーロック・ホームズものをかなり自由に翻案して、秋乃風幽霊心霊サスペンス物語に仕立てている。題名も「瀕死の探偵」「緋色の研究」「オレンジの種5つ」とそれらしくつけているが、ホームズものへのオマージュと思ってるとちょっと期待外れだろう。でも、日光アレルギーの心霊が見える大学OBと全く霊感のない体力派行動派ラガーマンOBの若いコンビの冒険物語として読むなら、まとまった佳品連作です。

心霊もやし男の家系の事件を二人で解決する「緋色の研究」は読めるお話ですし、最後はコメディになっちゃう「オレンジの種5つ」は少女漫画の王道みたいな話で、まあ秋乃茉莉ファン限定のファンサービス作品といえましょうか。

萩尾望都ポーの一族 春の夢」「ポーの一族 ユニコーン小学館2017年2019年

ポーの一族新シリーズとして一昨年に出た時は、うむ、萩尾も年取ったかと絵柄が変わってるのは当然としても、ちょっと食いつけなかった。無理に決着つけなくてもいいのに・・・と思いつつも、萩尾望都ファンのこだわり老残みたいな感じで捨てられずに

「春の夢」を本棚の隅に押し込んでた。

ユニコーン」が出て、読んでみたら、一気読み・・・要するに前の巻は、舞台設定舞台道具がそろって出てきてなかったので、物語世界像がつかめなかっただけなのだ。二巻目でエドガーエドガーらしい、人間離れした超絶雰囲気を発揮しだして、おお、これこそエドガーだと再会した喜びとなつかしさを覚えた。

三巻目が待ち遠しいなあ。