Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

【私のミステリな日々】2006年9月中旬半村良「獄門首」名香智子「水色童子 1」高橋克彦「完四郎 広目手控」ロバート・クレイス「破壊天使 上下」

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今日は4時半で仕事が終わって、古本屋をのぞいたら、半村良の「獄門首」がワゴンセールに並んでるのを見て即買い。100円。で、さっそく、読了。というんで、また4冊分アップ。今回の四冊はみんなお気に入りです。
kokokara-----------------------------------------------------

半村良「獄門首」光文社 2002年 100円 定価 1800円+税

半村の死によって未完になったピカレスクロマン。
八代吉宗の時代に江戸で幕府の富を非合法に減らそうという北条一族末裔の盗賊集団の若きリーダーの物語。
この泥棒どもは戦争をやってるつもりでありますから、平気で幼児老人も皆殺しでお宝を盗むという非道ぶりは、もはやテロリズムです。
これが、でもおもしろいんだわ。
解説の清水義範が泣かせます。たぶん、題名通り主人公が獄門首になるまでを書くつもりだったと思うとかいてるのですが、不思議なことに、この未完でおわっているところが、いよいよ、大泥棒へと名乗りをあげるところで終わってるため、テロリズムの非道さが薄れて教養小説みたいなあまい感傷でまとまっているんですね。

名香智子「水色童子 1」小学館フラワーコミックス 2004年 505円+税

マンガです。若くて、ハンサムで無職の暇人の素人探偵ってのは現実にいるかとある日名香智子は考えたのですね。で、十代でマンガ家として大成功して、22才で印税暮らしで引退したというヒーローを考え出した。彼が探偵役。ワトソン役には、警察官一家に生まれて警察官になったが、辞めたのか辞めさせられたのかわからないが民間人に戻ったばかりの元刑事の虎という名の女の子。
で、解決のヒントはマンガ家の同居人のタロット占い師にまかせて、少年誘拐事件、宝捜し殺人事件、ネットゲーマー殺人事件と解決してしまう。
名香智子のファンなら、おおミステリーを書いたかと感動してしまいます。
名香智子って誰だ?っていう人には、全然すすめられませんが。

高橋克彦「完四郎 広目手控」集英社文庫 2001年 200円 定価 619円+税

瓦版で稼いでいる古本屋「藤由」の由蔵は噂の広めが仕事の「広目屋」でもある。文章は仮名垣魯文、絵師は一恵斎芳幾。江戸文学史と美術史に残る二人がスタッフなんだから、これはあとはちゃんと事実を分析する能力の人間がいれば、鬼に金棒とディレクター由蔵は考えた。
そこに、ちゃんと居候がいた。
元旗本の完四郎。千葉道場の目録までいったが、侍に見きりをつけて、今は古本屋の店番居候。由蔵、芳幾、魯文が実在の人物だけど、完四郎は高橋のフィクション。
安東広重の浮世絵二枚から話をつくって見せるという趣向は高橋ならではのものだけど、この浮世絵が文庫本だと今一つ。
「梅試合」は亀戸の梅屋敷への人寄せ企画を完四郎が考え出して、そこで一儲けをもくろむ魯文をスタッフに迎える枕話。
「花見小僧」は二匹目の泥鰌を狙った魯文の企画で一両を獲得した骸骨絵の書き手が池に小判を投げこむのだが、これが二人目のスタッフの芳幾ってわけ。
「化物娘」は怪談話。
「雨乞い小町」は、このオッサンカルテットじゃあ、ちょっとものたりないと「ドールズ」シリーズの作家らしく十四歳の超能力娘を登場させてきた。完四郎は水戸斉昭の政治陰謀の道具になりかかった『お映チャン』を助け出した。未来が見えるというので藤由も彼女もスタッフに加えた。
「花火絵師」は花火だけしか書けないが花火を書かせたら当代一という売れない浮世絵師のエピソード。
「悪玉放生」にはくすぶり時代の新撰組のおなじみ三人組が出てくる。この三人のゲリラテロ活動を止めさせるために完四郎は歳三と立ち会って、まだ実戦経験不足の俊三をとことん打ち負かす。「かぐや御殿」「変生男子」「怪談茶屋」「首なし武者」「目覚まし鯰」「大江戸大変」の12
話がはいってます。最後の二件はお映が預言した大江戸大地震物語。
おもしろいです。文句なしに。

ロバート・クレイス「破壊天使 上下」講談社文庫2002年 105円・105円 定価990円+990円

Demolition Angel by Robert Crais, 2000.

まず、値段だけど、これは自殺行為じゃないのかなあ。上下合わせて630ページの本に1980円+税なんて、出版やってたら、この時勢、みんな腰がひけちゃうぞ。>講談社
LAの元爆発物処理員で今は女刑事のスターキーの対爆弾リハビリサスペンスミステリです。スターキーの元同僚の爆発物処理員が解体作業中に爆死する。
爆弾の構造から、この爆弾は、ミスター・レッドの作だと警察は結論する。
スター・レッドを追い続けるFBI捜査官は、その爆発シリンダーを現場から発見して、スターキーの名前が入っているのを確かめるが隠してしまう。警察の証拠に残っていたものはSのみで、これはスターキーのSだったのだが、警察はチャールズのSと考えた。そうFBI捜査官のベルは、レッドの狙いはスターキーだったという事実を隠すことで、ミスター・レッドをおびき出させ
ようというものだった。
でも、真物のミスター・レッドはフロリダで仕事していたので、偽物の出現に激怒して、裏の情報(爆弾材料減量入手ルート)から犯人をつきとめて、自ら処刑して自分の存在を見止めさせようと次の仕事を断り、LAへ向かった。
まだ自分が爆弾で負傷したときのビデオを見れないで精神科医にかかっているスターキーは、ここで逃げたら一生なおらないと犯人捜査に乗り出して、まず爆弾は、ミスター・レッドを巧みに模倣したことを証明する。
いやあ、これでどうやって話をバラバラにせずに収束させるんだろうと途中で思う広がりを見せるのですが、それが、ミスター・レッドの参戦とともに、一気に三百ページかけて突っ走って見せるんですね。で、その流れの中で、ミスターレッドは、一度爆弾事件から生還したヒロインとして犠牲者リストのトップにスターキーを書き込むんです。
よくスターキーが物語りの最後でも生きてたもんです。主人公は死なない、というのがその理由だろうけど。(笑い)
ん、でも凄いなあ、アメリカってのは、こういう事件が一年に二千件あるっていうんだから。イタズラは抜いて。つくづく、アメリカで警備員やってなくてよかった。年に500人から700人が死んでるなんてねえ。まだまだ日本は平和ですねえ。
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ミステリ舞踏派久光