Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

【私のミステリな日々】2006年七月中旬 日明恩 『それでも、警官は微笑う』高橋義夫 『御隠居忍法 不老術』

Newsgroups: mystery/salon #2686
このところの雨続きで、今月は三分の一は休んでるという珍しい七月になっています。
警備員になって、こういう七月は初めてで、雨でも休めないという現場ばかりだったので、まさに晴耕雨読になるか・・・と思いきや、意外に読まずに、町をふらふらしてたりで、時間が半端にあまるのも問題ですね。
というので、2冊だけ。
牧秀彦の『碧燕の剣』は[heiji]004 で書いたから、パス。
kokokara--------------------------------------------

日明恩 『それでも、警官は微笑う』

講談社文庫 2006年 781円プラス税

長身武骨無骨無口な池袋署勤務の巡査長刑事武本正純が探偵役。脇は、年下の上司、潮崎哲夫警部補(キャリアじゃないけど、その実家の権勢50%、本人の頭脳と試験技術力50%でのしあがってきて、警視庁の治外法権というあだながある)。仲間には、二人の上司の安住課長とか、同僚の内田刑事とか、けっこうめぐまれているのだが、二人とも日本社会の一典型といえる日本警察の上位下達の硬直対外無責任内部上部都合保守組織絶対階級体制下で窮屈な生き方を、マイペースでなんとか妥協調和させて警察官人生を送っている。
二人が遭遇したのは、日本を武器市場にしようという超長期戦略のもと、日本に拳銃を密輸して、銃に興味ある小金持ちたちに密売して、ある程度「普及」させたところで、中国マフィアを使って、これらの販売リスト先に押し入り強盗に入らせ、その銃の違法保持者に正当防衛で使わせることを繰りかえして、日本の私人による銃保持を現実先行的になしくずしにして、正当防衛のための個人の銃所持を可能にする立法化をはかり(ちゃんと保守政治家をとりこむわけです)、その後大量に日本に拳銃を合法的に輸出して外貨を稼ごうとしている、中華人民共和国軍の一部による犯罪組織末端だったのです。
その先兵として中国大使館員として来日、日本人と結婚した後、これを病死の体で殺して、日本国籍を取得したという日中貿易商社社長が敵役。
(まあ、別に、こんなまわりくどいことしなくたって、中国は日本から円を巻き上げられる経済体制になってるとか、銃を解禁させたら、まちがいなくアメリカが日本市場の寡占化を達成しちゃうのは目に見えてる・・・小泉にしろ、安倍にしろ、飼い犬だもん・・・なんてリアリティ問題は不問です。話を面白くする説明設定なんだから)
麻薬取締官が道化回しにからんで、最後は、中国からも見捨てられ粛清されかけた林が輸入拳銃強奪に立ちあがり、中国マフィアを皆殺しの最中に武本が殴りこむ。(しかも丸腰で!)
第25回メフィスト賞受賞のエンターテインメント。
日明恩は「たちもりめぐみ」と読むのだそうです。
そして警官は奔しる」てのがあるそうで、これはひょっとして、武本シリーズなのかも。

高橋義夫 『御隠居忍法 不老術』

中公文庫 2001年 667円プラス税

御存知御隠居忍法シリーズ第三作。
伊賀者の子孫で古流武術の達人、鹿間狸斎江戸から隠居さきの奥州笹野に戻ってきた。幼子と待っていた妾のおすえは、その晩がっかりしてしまった。狸斎なんて名前をしてるくせに、「立たなく」なってしまっていたのだ。本人も年か、とがっくり。おすえも、知合いのものも、狸斎も回春の妙薬を探しまわるというのが、通奏低音
話がダレそうになるたびに、このベイスのリズムでストーリーは活き返る。
その狸斎は、山の滝で白骨化した手首の骨が出たと聞きこみ、「妙薬」探しついでに出かけると、近在の村で若い男達が神隠しに次々と消えているという。問題の山域は、天領と二つの藩の境であり、なにやら怪しい匂いがする。ご神体の石を持ちかえって、親友に渡したら、その親友は石を調査しに城へいったまま、どうやら、監禁されてしまったらしい。狸斎自身も隠密疑いで追及の手が伸び始め、刺客もおくりこまれ、逃げ隠れしながら、狸斎は真実を炙りだしにかかる・・・という筋書き。
まあ、スーパーヒーローものだから、最後には、正義は勝つ! 
で、なんといっても、「妙薬」も見つけて、ハッピーエンド。

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ミステリ舞踏派久光