Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

Parnell Hall"Shot", J.A.Jance "Shoot/Don't shoot", 梶山季之 「大統領の殺し屋」 ,島田一男「轢殺交通捜査官」

kokokara------------------------------------------------------------

パーネル・ホール 「撃たれると痛い」ハヤカワ文庫 1995年 200円 定価 720円+税

Shot by Parnell Hall, 1995.

陪審員はつらい」がシリーズ中の白眉なら、この作品は一番のお気に入りと言えましょう。事件自体は、まあ、たいしたことはない謎ですが。
ついに、スタンリーが法律事務所から探偵事務所として独立したのです。今までは、法律事務所の一時間十ドルの、ほとんど、現代東京の交通誘導警備員以下の稼ぎしかできないのに(仕事が一日八時間あるとはかぎらないのです。契約とれなきゃ無駄動きになる。で土日は休み、どう考えても、一月14万以下の稼ぎ・・・賢妻アリスの稼ぎがなければ息子と一緒にホームレスになりかねない)、その待機時間も自由には動けなかったスタンリーが、もし探偵事務所の依頼が入ったら、そちらを優先して調査できるという合意をやり手弁護士でいかにもユダヤ人と言った名前のリチャード・ローゼンバーグからとりつけたのです。
その最初の依頼が、メリッサというさえない事務員だが、しっかり貯金をためこんで小金持ちの女だった。恋人が彼女を本気で見てるかというもの。
追尾をして見ると、女がいるらしい上に、会社での地位もただの走り使いなみなのに、幹部を装っているとスタンリーは、メリッサに報告する。メリッサは激怒してスタンリーを首にしてしまう。同時に弁護士事務所の指示は、44針の傷を転んで負ったというラヒームという少年と、その躓いたヒビの写真を撮りと契約をとることというもの。どうやら傷の本当の原因は児童虐待かとスタンリーは気づく。でも、金は取れるところから取るのが人生というもの。
翌日、メリッサの恋人が射殺され、メリッサが逮捕された。警察も妻のアリスもメリッサがやったにきまってると主張するのに、スタンリーは、恋人は何かの運び屋をしていて、そのからみで、殺されたと、またも勝手独自捜査に乗り出すが、恋人を追尾していて見つけた『黒い死神』を追跡して、ラヒームのアパートの近くのビルに入ったところで、スタンリーは撃たれてしまう。
「弾丸は左胸から入って、心臓ははずれた、肺も外れた、肋骨を一本かすめた」と麻酔から覚めたスタンリーに医者は即退院を許可する。(主人公は運が強い。強くないと物語りは続かないもんな)
で、またスタンリーは懲りもせず勝手捜査を再開する。今回は、完全にスタンリーの事件も含めて警察が解決するんだけど、そんなことはスタンリー自身も、スタンリーに憑依してる読者自身もどうでもよろしいのです。この物語のクライマックスは、三角巾が取れたスタンリーが、包帯のとれたラヒームとバスケットのワンオンワンをやって、勝つところなんだから。その十三ページは、ミステリでもなんでもないけど、良質のフィールド・オブ・ドリーム物語なんです。
田中一江さんの訳もいいけど、このシリーズは英語がしゃれていそうで探して読みなおそうっと。

島田一男 「轢殺交通捜査官」光文社文庫 1996年 100円 定価500円

初出は1991年カッパノヴェルズ

晴海の岸壁の下に沈んでいたベンツが引き上げられると、そこから中年男性とハイティーンの女の子の死体が出てきた。その女の子の死体は、
ベンツの車輪間隔は160センチで、女の子の身長は157センチ』『タイヤ痕は胸についてて、大腿部の骨折部までの間隔は五十センチ余り』という謎を提出していた。
森チョウさん以下警視庁交通部交通捜査課捜査班第三係の面々は(それにしても長い所属名だけど、こういうところが島田の捜査官シリーズの雰囲気なんです)靴をすり減らす聞きこみを開始する。せっかく出てきた目撃者は轢き逃げされて死亡、しまいには森チョウさんまでが轢き逃げにあう。
刑事もののドラマが好きな人は、面白いだろうけど、推理を少しでも楽しもうという人にはお勧めできませんね。ちょっと、犯人像に無理がある。

梶山季之 「大統領の殺し屋」光文社文庫 1988年 100円 定価400円

初出、1974年 カッパノヴェルズ

経済記者の『おれ』は驚異的経済発展をしているZ国へ飛ぶ飛行機の中でチュメニ油田開発でモスクワに飛ぶ商社マン志津井としりあいになる。知り合いになって、三ページ目の飛行機の中で、志津井は死んでしまった。発表は狭心症の発作。
Z国に到着して、ジャーナリスト仲間のO・モーリーと会うと、志津井は殺されたのだと打ち明けられるが、その彼もまた殺される。
読み進めるうちに、このZ国はN国のことだと気がつく。そう、これは物語でしか発表できない歴史の裏面史じゃないのかって思えてくる。
登場人物がおもしろいんだ。前述のO・モーリーは、七十年代に青春時代を送ったものなら誰でも知ってるベトナム戦争報道をめぐってアメリカから毎日新聞に圧力がかかって首になった大森実がモデルだし、黒幕の名前がヤスミッチ・シロカネスキー、殺し屋がイトーヤ、贈収賄疑獄事件の主人公がフキワダーラ、高利貸モリ・ワイスキー、大統領イケルビッチ、新大統領タナカーノ、元キングメーカー、シゲルビッチ・ヨシターノ・・・
この本が出て一年後の1975年に梶山は香港で客死する。
時報道されなかったもので、初めてこの本で知ったうわさは、日銀の大金庫から百万円が1963年に盗まれたというもの。これが、自民党の総裁選に使われたなんて噂は、そのころ噂の真相も出てなかったから、知り様もなかった。
1976年、ロッキード事件が発覚。梶山は、この事件の取材を進めていてそれがタメに香港で毒殺されたという説を解説の中田建夫が紹介してる。
中田はこう結ぶ。
『梶山さんの死の直後から私の頭の片隅に住みついている疑念は、いまも消えないままである。』

梶山の本は古本屋で見つけたら必ず買いましょう。もっとも、あなたが、体制べったりに生きる決意を固めてるなら、それをぐらつかせかねないものが伝染するかもしれないから、危険物として、近づかない方が身のため。

J.A.ジャンス 「ママは新人シェリフ」集英社文庫 2000年 100円定価 800円

Shoot/Don't Shoot by J.A.Jance, 1995.

プロローグから一章の二十ページの文章のあとで、やっと、シリーズ主役のジョアンナ・ブレィディが登場する。
夫のアンディは薬がらみで二月前に殺されたシェリフ助手だった。29歳で小学生の娘ジェニファーがいる。シェリフに立候補して当選して、警察官の訓練で警察学校へ入学する。
ところが、その地元アリゾナ州コーチス郡に連続セックス殺人犯が出没し始めていた。犯罪は、警察学校のあるピオリア周辺にも及ぶ。
犯人はターゲットのパンティをあらかじめ手に入れてから、事件を起こすという変態だった。だが普通の市民の仮面を被っている限り正体はバレない。犯人は、捜査牽制のために、ジェニファーとそのクラスメイトのセシを誘拐する。
ジョアンナは犯人を追いつめて、足を撃って捕まえたと思うもまもなく、犯人は自殺してしまい、娘達の行方はわからない。
さて、娘達をジョアンナは見つけられるかというのが真のクライマックス。
なんでも、シリーズは Desert Heat, 1993. Tombstone Courage, 1994. の二作が本作の前に出てベストセラーになってるそうだ。
ma-----------------------------------------------------------kokomade.
あるブログでパーネルの「探偵になりたい」が星二つという低い評価だったのでまあ、第一作の未熟さもあるからしょうがないかとも思うけど、パーネルの真骨頂は別の作品にあるとちょっと、ミステリ会議室にアップしたものを再掲することにしました。
ミステリ舞踏派久光
to--------------------------------------------------------------kokomade.
いやあ、この年はずいぶんパーネル・ホールに入れ込んでましたねえ。
ミスパラ留守番モデレータに乗りまくって独演会を延々やってたんですね。(笑い)
そのうちぜんぜんレスがつかないもんで、つまんなくなって読むだけになるのだけれど。
で、まだパーネルホールの記事はありますのです。
to---------------------------------------------------------------kokomade.

ミステリ舞踏派久光@今日の午後はフリーマントルの「屍泥棒」を読んでました。