Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

【私のミステリナ日々】2003年正月 Strangler by Parnel Hall,Agatha Christie "The Secret Adversary" 米村圭伍「風流冷飯伝」かわぐちかいじ「探偵物語カブ」

kokokara-------------------------------------------------------------
2002年は、パーネル・ホールに暮れ、2003年も明けた。
読んで、読みっぱなしというのも、そろそろ飽きた(というより、机の周りに積み上げているのが、崩れ落ちそうで危ないので、少しずつ、書いていくことにしました)
うん、やっぱり、ホールで一年の初めのミステリなデイズをかたることにする。

パーネル・ホール 「絞殺魔に会いたい」ハヤカワ文庫 1992年 200円 定価 720円プラス税

Strangler by Parnel Hall, 1989.

ホールの分身みたいな弁護士事務所の保険調査員スタンリー・ヘイスティングシリーズ第4作。スタンリーの紹介をしておこう、四十代の俳優・作家志望者の慣れの果ての調査員である。妻と子がある。人生の誇りはスターになる前のシュワルツネーガーと一緒の映画にセリフつきのチョイ役で出たことくらい。
(これは、パーネルの実体験らしい・・・著者の写真見ると、いかにも役者くずれのお人よしのインテリって顔してる・・・あくの強さとは無縁、つまり、てらいもないかわりに華もない・・・知り合いとしては楽しい友人かも)
まあ、彼が道化探偵(舞踏派の定義によれば、道化探偵というのは、ワトスンが主役勤めて記述する探偵物語である)役を勤めて犯罪に巻き込まれ、プロの警察捜査官が事件をきちんと解決するというワンパターンなんである。スタンリーの他人の言葉をうのみにしすぎる性格のせいで、真相すれすれまで接近して、かすってバタリと倒れる。このパタリというところがNYコメディ風なのである。
舞台はもちろん、NYである。これがシカゴやフロリダやワイキキやLA、サンフランシスコでは
スタンリーの軽妙なつぶやきが生きてこないだろう。
スタンリーの仕事は、弁護士事務所に電話で依頼が入ってきた事件の現場写真とりと被害者に契約者のサインをしてもらうことなのである。事件というのが、道路で転んで腕を折ったのでNY市を訴えたい、路地でホールドアップをくらったついでに怪我したのでその路地のそばのビルの持ち主、管理会社、警備会社を訴えたいというような事件である。こういう事件を手がけたら百戦百勝の凄腕弁護士リチャード・ローゼンバーグの事務所のナンバーワン調査員なのである。ナンバーワンといったって、あんまりの報酬の低さのために長続きするものがいないだけで、スタンリーの場合は、中年の役者・作家崩れでつぶしが効かないために、やむを得ず後輩の仕事の走りづかいをやってるというわけなのである。
事務所に腕を骨折した男から電話があって、スタンリーは男の元へでかけるが、男の部屋の鍵は開いていて、中で男は絞殺されていたというのがこの4作目。
で、今までの三作でなじみの名刑事マコーリフではなく、別の刑事が事件を担当する。かれもまた、名刑事なんだが、スタンリーは、ミステリの読み過ぎで刑事はすべて、レストレード警部と思ってるタイプだからホームズ役は俺だと金にもならない事件へ首を突っ込んで行く。
まあ、このインテリ馬鹿探偵のつぶやきの面白さっていったら、ちょっと比類がないほど楽しいのです。まるで、軽妙な都会風エッセーのさわりばかり読まされるような洒脱さなんですね。
ほんで、最後のシーンは、名刑事マコーリフにスタンリーが奨めたミステリをマコーリフが誉めて、このハーキュリー・ポイロットの出てくる、アガサ・クリスティものは他にないのかとたずねられて、スタンリーが答える。
「あんたはついてる、これはシリーズなんだ」って。
これが一番好きな場面です。はい。

Agatha Christie "The Secret Adversary"

A Signet Book, Copyright Dodd, Meat & Company, Inc., 1922
Copyright renewed Agatha Christie Mallowan, 1949.
U.S. $5.99, \1186 + tax @ 紀伊国屋書店

十代のころのお気に入りで、現在も舞踏派のお奨めベストスリーの一つ。
要するにヒロインのタペンスのファンなんですね、あたしゃ。
英語で読む限り、全然古くないぞ。ハリウッドB級映画みたいな設定・展開の娯楽エンターテインメントミステリだけど。ポワロファンには推理ゲームの面白さが足りないというひともいるかもしれないが。
舞踏派のお奨めの三冊といえば、エラリー・クイーンの「ハートの4」ジョルジュ・シムノンの「ゲームーランの踊り子」なんだ。あとは、これか、アイリッシュの「暁の死線」だな。次がハメットの「ガラスの鍵」。
ついで、クレイグ・ライスの「ホームスイート殺人事件」あと、ホームズ物全部と銭形平次もの全部。とにかく、その中の片手に入るものです。
え?好みが偏向してるって?(笑い)
なんと言われようと、これが原点なんだもん。

米村圭伍「風流冷飯伝」 新潮文庫 2002年 20円 定価 不明 単行本 1999年。

江戸の幇間(なんでタイコモチで変換しないんだろう)の一八が四国の風見藩に現れた。一応、都落ちの口実はあるもの、実のところは幕府隠密役を強制さてたっていうわけ。なにを探るかというと、これが謎。まあ、おもしろいから読んでみなせえ。ここであらすじ書いちゃったら謎が謎じゃ、なくなります。
しかし、これが、古本屋のワゴンセールで五冊百円、消費税なし。(最近、消費税取る古本屋がけっこうあるんです・・・そのケチさ根性の卑しさは、お笑いもんですが)カバーがついてなかったから、定価不明。

かわぐちかいじ探偵物語カブ」世界文化社 1998年 500円 定価900円 原作 林律雄

徳間書店のコミック・バンに1984、85年に連載されてたのだそうだ。そんな雑誌あったかいな。ま、その後、あの潜水艦もので、急激に日本再軍備協力支援コミック作家になっていく前に、ユーモアたっぷりのハリウッドコメディ風探偵物語を書いてたんですね。まあ、半村良さんの原作で、もろに日本右傾化警鐘作品の「軍靴の響き」なんかも書いてたのを思うと、自分で原作を作るようになったら、一気に自主独立再軍備肯定派に走ってるというのはずっと贔屓の作家だっただけに、ちょっぴり悲しい。でも、この作品は、本来のショボクレ探偵路線で安心して、日本下町風コージーハードボイルドを作り上げられております。
マンガの場合、本人が・・・というより、一緒に作る編集者が右傾化の流れに乗ってるものばかりになると、作家もそういう風に幹と枝葉を伸ばして行くんだろうな。今は、右傾化の時代なんだろう、きっと。
to-------------------------------------------------------kokomade.

前の記事を読み返してみると長すぎる。そのせいで、ハテナブログでの表示もおかしくなってる
ので、ミステリパラダイスにアップした時の一回分づつに分割することにしました。ただ、同じ日にアップすると、同じ記事に合わされてしまうので、毎日アップするしかありませんので、二度読むことになる人には、ごめんなさい。です。

ミステリ舞踏派久光
(なんてことはない、日付をいじれるなんて思ってなかった。無知をさらけだしてますね。「自分で原作を作る」なんじゃい、この日本語は、自身のオリジナルになったら、とでも今なら書きますね。。。15 ocotbre 2010 追記)