Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

【私のミステリな日々】2003年4月 Detective「探偵になりたい」 by Parnell Hall, 「花嫁誘拐記念日」Revenge Of The Gypsy Queen by Kris Neri, 「風の向くまま」Anything Goes by Jill Churchill, 鳴海章 「劫火 航空事故調査官」

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パーネル・ホール 「探偵になりたい」ハヤカワ文庫 1989年 200円 定価640円プラす税

Detective by Parnell Hall, 1987.

スタンリー・ヘイスティングシリーズ第一作。
事務所は、一応、義父の旧オフィスを借りてるけれど、探偵事務所ではなく保険調査員事務所なのだった。そこへ一人の男が探偵事務所と思って仕事を依頼にあらわれた。
依頼の内容は、「殺さないと殺されるから、力をかしてくれ」というもの。
聞きたくないというスタンリーに依頼者は、話し難いけど話したいと粘る。
まるで漫才のコントみたいなやりとりで、どうやら男は、薬の運び屋役を会社の出張のたびにやらされるはめになっているということがわかる。その運んでいた物の一部をちょろまかして、一儲けしているうちに、ちょろまかし仲間の一人が殺された、次は自分の番・・・と聞くだけ聞いて、実は自分は事件の調査はしてないとスタンリーは頑張った。依頼者は「役立たず」と捨て台詞を
残して去った。
翌日新聞を広げると、依頼者が「体の一部分を切断された」死体で見つかったという記事が目に飛び込んできた。
ここで、スタンリーの好奇心が目覚めて、のこのこ依頼者の会社なんか覗きにいくもんだから、こんどは、ジンジケートがスタンリーを運び屋候補として目をつけることになった。
でも探偵活動はお金がかかる。その活動資金はカードローン・・・。
いかにもNYのコメディみたいなつくりのミステリです。

◎クリス・ネリ 「花嫁誘拐記念日」ハヤカワ文庫 2002年 350円 定価八百円+税

Revenge Of The Gypsy Queen by Kris Neri, 1999.

両親がハリウッドのビッグネーム。その娘の三十女のトレイシー・イートンは売れっ子のミステリ作家。顔は天使で舌は毒蛇という、まあ小悪魔みたいなヒロインです。
彼女が結婚した相手の家族は東海岸の上流家庭での弁護士で、その妹が結婚するというので、旦那は、はらはらしながらも、トレイシーをNYへと連れて行く。義妹のマリサはイタリアレストランのコックと結婚するという。二人は共同してすでに高級レストランを成功させていたのだが、その一角を地上げしたいという、トランプをモデルにしたような不動産屋やなぜか、その店を見張っているギャング達が現れて、てんやわんやの内に、花嫁が誘拐されてしまう。トレイシーは恐ろしげな女の運転する車にはねられ損なう。誘拐犯の要求は不動産屋に店を売れという。ところが、店の権利を持っていた、一族のやっかい叔父は、すでに自分の権利をパリにいる男に売ってしまったと言ったあと、これまた姿を消してしまう。
これこそ、私の出番とミステリ作家は探偵役を買ってでるが、義父も義母も旦那も、皆、彼女の活動を迷惑と思って邪魔するありさま。彼女を助けてくれるのは、イラク出身のタクシー運転手ヌリだけ。
もろ、ハリウッド風小粋なミステリ映画かドラマになりそうな佳品。
(ブッチャケメリカの狂犬ぶりにうんざりしてたから、これ読んで少し、ほっとした・・・でもイラク侵略は、ますます激しくなるばかり)

◎ジル・チャーチル 「風の向くまま」創元推理文庫 2002年 300円 定価740円+税

Anything Goes by Jill Churchill, 1999.

クッキングママシリーズのジル・チャーチルの新シリーズ。
舞台は、1930年代の大不況時代。ルーズベルトがまだ大統領になっていない1931年。
リリーとロバートのブルースター兄弟は、父親の破産と自殺のあとで、二人でなんとか底辺のワーカーとして働いていた。リリーは単純事務職、ロバートは美貌を生かして夜の水商売。でも、まっとうにくらしてた。そこに叔父のホレイショーが大遺産を残して死んだ。条件は、古い屋敷に十年間住みつづけること。
住んで見ると、叔父の死は嵐の中のヨットの座礁と事故死で、どうも殺人事件くさい。二人は、自分達の名誉と好奇心から探偵ゲームを開始する。
一ドルが消えたと言っては兄弟二人でガソリン代をどうしようと悩むような資産家人生。なんか御伽噺のチルチルミチルが探偵役みたいな華麗なるキャッツビーの転落物語とは正反対のミステリ。
トミーとタペンスが海の向こうで貧乏を忘れてのんびり暮しているようにクリスティが大不況時代の社会状況を書かなかったのとは対称的に、チャーチルは、きっちり現代アメリカの揺籃時代の下積みの影を書きこんでいます。
このあとどう二人の人生が展開していくのか、期待十分な新シリーズです。

◎鳴海章 「劫火 航空事故調査官」集英社文庫 1998年 200円 定価660円

少し前に、台湾の中華航空エアバス名古屋空港で着陸失敗して、炎上した航空事故があった。これは、それを下敷にしたフィクションです。航空事故調査官というのは、れっきとした公務員で、その立場は、メーカー、航空会社、政府、政界といろいろ、事故処理後に金がからむために、微妙なものがあるようです。
その事故調査官が主役なのかと思ったら、本社勤務のはぐれ気味の友軍記者上沢が動き回る。このしかけは、事故調査官の立場がそう自由なものではないという現実を踏まえて、事故全体の調査をするには、フリーに動ける新聞記者がいいという鳴海のリアリズムなんでしょう。
鳴海は、パイロット、調査官、新聞記者、それぞれの私生活をフィクションとして家々の患いを背負わせて、実際の事故のヴォイスレコーダー記録等を、調査官が新聞記者に解説するというやり方で、事故の原因を解明していく。
当時の新聞報道では、たしか、エアバスの最新の着陸操作に機長が不慣れだったのが事故原因とあった記憶があるが、鳴海は、別の解釈を提出している。でも、そういうミスにも関わらず、副操縦師が最後の最後まであきらめずに、パワーパワーパワーと叫んでいるヴォイスレコーダーの分析場面は感動的です。

to------------------------------------------------------------kokomade.
やっと、分割再掲終了。
アサヒネットミステリパラダイスで2000年末に20世紀のベストミステリを各自選んでみようという企画があって、(毎年その年のベストミステリを書き込むのが恒例だったんです)それに書き込んだ舞踏派のベスト30を明日アップしましょう。基本的にこれに変更はあんまりない。
それと、書名だけど、会議室で紹介された90年代後半のインデックスもアップしてみようかと思います。紹介文は、個人の著作権があるから、無理だけど、リストだけならいいだろうとおもいます。
ここを読んでるかたで、ハンドルネイムでも転載が嫌だと思う方は、ここのどの記事にでもその旨書き込んでください。アサヒネットの方のアドレスにメイルくださってもけっこうです。

ミステリ舞踏派久光