Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

ディル・フルタニ「ミステリー・クラブ 事件簿」 米澤穂信「犬はどこだ」

ついに、大晦日。本棚の整理をし始めたところで、いきなり頓挫。ロシェル・メジャー・クリッヒ「凍える遊び(原題 Fair Bame)」を引き出してしまった。うむ、これはどんな話だったっけ?というので、読み出す・・・・・・・

ま、とにかく、掃除はともかく、書く方のノルマを片付けなきゃ。
と書いた後、風呂に入って生姜湯をなめていたら眠くなって、大晦日だというのに、10時に寝てしまった。
スーパーのお節で起床後の空腹を埋めて、大根と人参と鶏肉の雑煮を作って食べ、散歩に出たら阿佐ヶ谷神明宮は長蛇の列。巳年だからしょうがないかとあきらめて鳥居近くの遊遊で、胃痛の後遺症に怯えながらお節膳で茶碗酒をなめ3500円払った後、カロリー消費の運動とパールセンターを南下、ブックオフで芦川淳一「兄弟十手江戸つづり 縁談つぶし」400円、大村喜美「首挽き村の殺人」105円を20%の正月ディスカウントで買ってしまい。その隣のOUTOET−Jで、キングダムの首切りカンキ風ボアつきのマウンテンパーカー4Lが40%引きというので、衝動買い。(最近、5Lじゃなくてもパンツもジャケットも4Lに身体が入るようになったんだよね・・・・・なんか悪い病気かもしれないという怯えもあるんだけど、安いもので着られるものが簡単に見つかるようになったのは嬉しいlololol)ボトム(最近パンツともズボンとも言わないのね)もないかと2Fに上がって捜してみたが、さすが38インチくらいまでしかない。それではちと『未だ!』無理。電気ガス固定電話携帯電話国民健康保険とコンビニで払ってもどったら、財布から一万円札が消えてしまった。うん、おとなしく、ブログ記事でも書いて冬休みを経済的に過ごさねば。
ということで、明けましておめでとうございます。

ディル・フルタニ 「ミステリー・クラブ事件簿」 戸田浩之訳 集英社文庫 1998年 100円 定価620円 Death In Little Tokyo by Dale Furutani, 1996

日系三世のプログラマー、ケン・タナカはリストラ失業中。40歳くらい。失業の背景にはアメリカの人種差別があるのだが、アメリカで生れて行き続ける以上、人種ハンディは気にしてもしょうがない。ポジティブ、ポジティブ。バツ一で、恋人のマリコがいる。ロサンゼルスミステリークラブの会員で、先月のトップ犯人当て解答者だった。トップを取ると、今度は出題者になれる。というので、失業中で経済的にもそう余裕もないだろうに、求職活動は物語の最後までまったくせずに、ミステリーロールプレイゲームに夢中なのです。
まず格好が、”淡い褐色のバーバリーのトレンチ・コートにグレイフェルトの中折れ帽”。ロサンゼルスの8月だってのに。で、リトル・トーキョーに事務所を借りた。金がないから、冷房はついてない。名刺を印刷し、電話を引き、ロビーと窓に看板もつけた。クラブのメンバーをここに集めて、ここをベースにリトル・トーキョー中にケンがばら撒いた手がかりを探してもらい、犯人を当ててもらおうという趣向。
その事務所にリタという女が訪ねて来て、完全に本物の探偵と勘違いされて、ホテルに行って書類を彼女の代わりに受け取って来て欲しいという依頼を受けた。報酬は500ドル。95年ごろのロサンゼルスのオフィスワーカーの無役のものの給料は、せいぜい月に1500ドルだから、10日分くらいの稼ぎが半日手間で入ってくる。おいしい。というのでケンはアルバイトすることにした。
ところが、これが本物の事件になる。ホテルにいたのは日本人の60代くらいのビジネスマンマツダ。ダンサーを自室に呼んでこれからお楽しみというところ。とにかく、品物はちゃんと受け取ってケンは引き上げた。
翌日、事務所でリタの来所を待っていると、今日は行けないので保管してほしいと言う電話が来て一方的に切られた。
ケンは事務所において置くのは無用心と、マリコが勤めている日系人経営のブティックに保管を頼みに出て、ランチに食べなさいと店のオーナーからシナモンパンをもらって事務所に帰ったら、そこにはロサンゼルス警察のハンセン刑事が待っていた。マツダが刃物で惨殺されたのだという。
一応不拘束の容疑者として自由に町を歩きまわれるものの、気分は悪いので、ケンは犯人探しに乗り出す。日本のヤクザも影どころか、事務所に侵入してくるわの、大騒ぎ。ま、それでも、マツダの過去を洗い、日系人社会の戦争中の強制収容所の過去の闇までしらべあげて、ケンは事件を解決する。
まあ、同じころのロサンゼルスで暮らしてたものには、たまらないですねえ。それと、日系アメリカンの社会のどこか古い日本の伝統が残っていながら、アメリカンの陽気で表面上一時的には人間付き合いをうまく運ぶ文化が行間から滲み出してくるのは、まるで故郷の町を歩いているような時間を楽しめます。もちろん、日本人差別のひんやりとした陰もしっかり足元に伸びてきます。
いいミステリです。

米澤穂信「犬はどこだ」創元推理文庫 2008年、初出2005年東京創元社、180円、定価740円

これまた、探偵は銀行をストレス性のアトピー性皮膚炎で辞めて故郷八保市に戻ってきた紺屋長一郎。アトピー性皮膚炎にさいなまれて外見は40過ぎに見えるが25歳。
《熟慮と友人への相談の結果、私は手軽な商売を始めることにした。本当はお好み焼き屋をやりたかったのだが、飲食業は水仕事で手の皮膚を酷使することから断念した。それで》犬捜索専門の「紺屋S&R(サーチアンドレスキュー)」なる調査事務所をオープンした。(何故犬探しかというと、大学時代に犬探しのアルバイトをやったらしい。)電話が繋がったその瞬間に電話がなった。おかしい、まだほとんどこの電話番号は知られていないはず。出てみると、最初の客だった。
友人の大南博がおせっかいにも、最初の客を紹介してくれたらしい。
客は佐久良且次という日に焼けた老人だった。依頼は東京で音信不通になっている孫娘桐子を探して欲しいというもの。
翌日、佐久良から孫娘の資料を送ってもらうのを待とうと8万円で買った中古車で事務所へ出勤してみると、ビルの入り口に若い男が立っていた。
《サマージャケットをひっかけ下は色むらのある古ジーンズ、かなり明るい色の茶髪を逆立て、誰も見ていないのにポーズを撮ったような姿態でヒビの入った壁にもたれかかっている。》
「お久しぶりっす、紺屋部長!」
高校の剣道部の後輩のハンペーだった。大南から紺屋が『探偵事務所』を開いたと聞いた後輩は押しかけ助手として現れたのだった。トレンチコート、ドライマティーニリボルバー・・・・・まるでロサンゼルスのケン・タナカみたいである。問題は賃金を払う余裕も見込みもないことだったが、ハンペーは、夜のコンビニバイトで食っていけるから、完全歩合制でいいとまでいうので、まよっているところに、二人目の依頼者が現れて、ハンペーこと半田平吉は「所員の半田と申しますと」言って既成事実を作ってしまった。依頼内容は、郊外の神社に保管されていた古文書の内容調査だった。公民館に飾りたいが、いい加減なものだと、その町だか村が大恥をかくという。しかも紹介者はまたもおせっかいな大南。小伏町役場の福祉課勤務で山地がほとんどの広大な町中を巡回して年寄りの話を聞くのが仕事と本人は言っている。(なるほど、探偵調査の仕事のネタの紹介者としては、実に理想的な脇役ですねえ。)断ると、大南の顔が潰れそうと思った紺屋は引き受けた。
というので、「都会から失踪した美女を捜すんだよ」の件は紺屋が、「古文書調査」の件はハンペーが担当することになって、ハンペーが呟いた。
「俺・・・・・・。そっちの方が、よかったっす・・・・・・」
まあ、ハンペーに任せてたら、別の結末になって、ハンペーも紺屋所長も山の中の土の下に埋められていたかもしれないような、恐ろしい事件が進行していたのですね。
もちろん、謎解きには、二人の調査が交差し、別々に完了するものの、その背景には、当節流行のストーカー事件が隠れていたのを紺屋は調べだす。
どのくらい紺屋が事件解決後に怯えたかは、最後の二行に集約されます。
Kokokara-------------------------------------------------------------
当分の間、私はナイフをてばなさない。
今回の報酬で、番犬を買おうかと思っている。
koko-----------------------------------------------------------made.