Mystery Paradise

元は今はなきアサヒネットのmystery paradise 会議室の分室のつもりだった。haha

ディル・フルタニ「ミステリー・クラブ 事件簿」 米澤穂信「犬はどこだ」

ついに、大晦日。本棚の整理をし始めたところで、いきなり頓挫。ロシェル・メジャー・クリッヒ「凍える遊び(原題 Fair Bame)」を引き出してしまった。うむ、これはどんな話だったっけ?というので、読み出す・・・・・・・

ま、とにかく、掃除はともかく、書く方のノルマを片付けなきゃ。
と書いた後、風呂に入って生姜湯をなめていたら眠くなって、大晦日だというのに、10時に寝てしまった。
スーパーのお節で起床後の空腹を埋めて、大根と人参と鶏肉の雑煮を作って食べ、散歩に出たら阿佐ヶ谷神明宮は長蛇の列。巳年だからしょうがないかとあきらめて鳥居近くの遊遊で、胃痛の後遺症に怯えながらお節膳で茶碗酒をなめ3500円払った後、カロリー消費の運動とパールセンターを南下、ブックオフで芦川淳一「兄弟十手江戸つづり 縁談つぶし」400円、大村喜美「首挽き村の殺人」105円を20%の正月ディスカウントで買ってしまい。その隣のOUTOET−Jで、キングダムの首切りカンキ風ボアつきのマウンテンパーカー4Lが40%引きというので、衝動買い。(最近、5Lじゃなくてもパンツもジャケットも4Lに身体が入るようになったんだよね・・・・・なんか悪い病気かもしれないという怯えもあるんだけど、安いもので着られるものが簡単に見つかるようになったのは嬉しいlololol)ボトム(最近パンツともズボンとも言わないのね)もないかと2Fに上がって捜してみたが、さすが38インチくらいまでしかない。それではちと『未だ!』無理。電気ガス固定電話携帯電話国民健康保険とコンビニで払ってもどったら、財布から一万円札が消えてしまった。うん、おとなしく、ブログ記事でも書いて冬休みを経済的に過ごさねば。
ということで、明けましておめでとうございます。

ディル・フルタニ 「ミステリー・クラブ事件簿」 戸田浩之訳 集英社文庫 1998年 100円 定価620円 Death In Little Tokyo by Dale Furutani, 1996

日系三世のプログラマー、ケン・タナカはリストラ失業中。40歳くらい。失業の背景にはアメリカの人種差別があるのだが、アメリカで生れて行き続ける以上、人種ハンディは気にしてもしょうがない。ポジティブ、ポジティブ。バツ一で、恋人のマリコがいる。ロサンゼルスミステリークラブの会員で、先月のトップ犯人当て解答者だった。トップを取ると、今度は出題者になれる。というので、失業中で経済的にもそう余裕もないだろうに、求職活動は物語の最後までまったくせずに、ミステリーロールプレイゲームに夢中なのです。
まず格好が、”淡い褐色のバーバリーのトレンチ・コートにグレイフェルトの中折れ帽”。ロサンゼルスの8月だってのに。で、リトル・トーキョーに事務所を借りた。金がないから、冷房はついてない。名刺を印刷し、電話を引き、ロビーと窓に看板もつけた。クラブのメンバーをここに集めて、ここをベースにリトル・トーキョー中にケンがばら撒いた手がかりを探してもらい、犯人を当ててもらおうという趣向。
その事務所にリタという女が訪ねて来て、完全に本物の探偵と勘違いされて、ホテルに行って書類を彼女の代わりに受け取って来て欲しいという依頼を受けた。報酬は500ドル。95年ごろのロサンゼルスのオフィスワーカーの無役のものの給料は、せいぜい月に1500ドルだから、10日分くらいの稼ぎが半日手間で入ってくる。おいしい。というのでケンはアルバイトすることにした。
ところが、これが本物の事件になる。ホテルにいたのは日本人の60代くらいのビジネスマンマツダ。ダンサーを自室に呼んでこれからお楽しみというところ。とにかく、品物はちゃんと受け取ってケンは引き上げた。
翌日、事務所でリタの来所を待っていると、今日は行けないので保管してほしいと言う電話が来て一方的に切られた。
ケンは事務所において置くのは無用心と、マリコが勤めている日系人経営のブティックに保管を頼みに出て、ランチに食べなさいと店のオーナーからシナモンパンをもらって事務所に帰ったら、そこにはロサンゼルス警察のハンセン刑事が待っていた。マツダが刃物で惨殺されたのだという。
一応不拘束の容疑者として自由に町を歩きまわれるものの、気分は悪いので、ケンは犯人探しに乗り出す。日本のヤクザも影どころか、事務所に侵入してくるわの、大騒ぎ。ま、それでも、マツダの過去を洗い、日系人社会の戦争中の強制収容所の過去の闇までしらべあげて、ケンは事件を解決する。
まあ、同じころのロサンゼルスで暮らしてたものには、たまらないですねえ。それと、日系アメリカンの社会のどこか古い日本の伝統が残っていながら、アメリカンの陽気で表面上一時的には人間付き合いをうまく運ぶ文化が行間から滲み出してくるのは、まるで故郷の町を歩いているような時間を楽しめます。もちろん、日本人差別のひんやりとした陰もしっかり足元に伸びてきます。
いいミステリです。

米澤穂信「犬はどこだ」創元推理文庫 2008年、初出2005年東京創元社、180円、定価740円

これまた、探偵は銀行をストレス性のアトピー性皮膚炎で辞めて故郷八保市に戻ってきた紺屋長一郎。アトピー性皮膚炎にさいなまれて外見は40過ぎに見えるが25歳。
《熟慮と友人への相談の結果、私は手軽な商売を始めることにした。本当はお好み焼き屋をやりたかったのだが、飲食業は水仕事で手の皮膚を酷使することから断念した。それで》犬捜索専門の「紺屋S&R(サーチアンドレスキュー)」なる調査事務所をオープンした。(何故犬探しかというと、大学時代に犬探しのアルバイトをやったらしい。)電話が繋がったその瞬間に電話がなった。おかしい、まだほとんどこの電話番号は知られていないはず。出てみると、最初の客だった。
友人の大南博がおせっかいにも、最初の客を紹介してくれたらしい。
客は佐久良且次という日に焼けた老人だった。依頼は東京で音信不通になっている孫娘桐子を探して欲しいというもの。
翌日、佐久良から孫娘の資料を送ってもらうのを待とうと8万円で買った中古車で事務所へ出勤してみると、ビルの入り口に若い男が立っていた。
《サマージャケットをひっかけ下は色むらのある古ジーンズ、かなり明るい色の茶髪を逆立て、誰も見ていないのにポーズを撮ったような姿態でヒビの入った壁にもたれかかっている。》
「お久しぶりっす、紺屋部長!」
高校の剣道部の後輩のハンペーだった。大南から紺屋が『探偵事務所』を開いたと聞いた後輩は押しかけ助手として現れたのだった。トレンチコート、ドライマティーニリボルバー・・・・・まるでロサンゼルスのケン・タナカみたいである。問題は賃金を払う余裕も見込みもないことだったが、ハンペーは、夜のコンビニバイトで食っていけるから、完全歩合制でいいとまでいうので、まよっているところに、二人目の依頼者が現れて、ハンペーこと半田平吉は「所員の半田と申しますと」言って既成事実を作ってしまった。依頼内容は、郊外の神社に保管されていた古文書の内容調査だった。公民館に飾りたいが、いい加減なものだと、その町だか村が大恥をかくという。しかも紹介者はまたもおせっかいな大南。小伏町役場の福祉課勤務で山地がほとんどの広大な町中を巡回して年寄りの話を聞くのが仕事と本人は言っている。(なるほど、探偵調査の仕事のネタの紹介者としては、実に理想的な脇役ですねえ。)断ると、大南の顔が潰れそうと思った紺屋は引き受けた。
というので、「都会から失踪した美女を捜すんだよ」の件は紺屋が、「古文書調査」の件はハンペーが担当することになって、ハンペーが呟いた。
「俺・・・・・・。そっちの方が、よかったっす・・・・・・」
まあ、ハンペーに任せてたら、別の結末になって、ハンペーも紺屋所長も山の中の土の下に埋められていたかもしれないような、恐ろしい事件が進行していたのですね。
もちろん、謎解きには、二人の調査が交差し、別々に完了するものの、その背景には、当節流行のストーカー事件が隠れていたのを紺屋は調べだす。
どのくらい紺屋が事件解決後に怯えたかは、最後の二行に集約されます。
Kokokara-------------------------------------------------------------
当分の間、私はナイフをてばなさない。
今回の報酬で、番犬を買おうかと思っている。
koko-----------------------------------------------------------made.

014幡大介「公事師 卍屋甲太夫三代目」:主人公を食ったトリックスター登場

年末です。28日まで仕事があったので、29日は終日布団の中で眠り虚仮。30日の今日になって、やっと書く時間がとれました。というより、ブログ記事を書く気力が戻ったと言う方がただしいかな。とにかく、この夏以来、体調不良気味を通り越して、ほとんど病気にもかかわらず、貧乏暇なしに仕事に出かけざるをえなかったから、夜はほとんど帰宅即就寝、朝は一応早朝に目覚めてはいるものの、布団の中で文庫・マンガをぼんやりと読んでいるような無気力状態だったのですね。ぼうっと、読むだけなら、エネルギーは消費しないもん。lololol

幡大介「公事師 卍屋甲太夫三代目」幻冬舎時代小説文庫 2012年 幻冬舎 定価648円+税

江戸時代の民事裁判公事の半民間検察官弁護士兼務業務みたいな公事師の江戸きっての名門宿、卍屋の跡取りは男でなければ、公事師仲間からも勘定奉行所からも認めてもらえないのだが、二代目が倒れて見ると一人娘のお甲しか実子がいなかった。となると、お甲が婿をとるしかないのだが、お甲には勘定奉行所与力の恋人がいた。身分違いすぎて、妻にもなれず、まさか与力を婿入りさせることもできないが、公事を仕切らせたら江戸一の切れ者のお甲は公事も、恋もあきらめられない。そこで、居もしない三代目を恋人としめし合わせてでっち上げた。
そこへ、卍屋に煮え湯ばかり飲まされる、やはり公事宿車屋の主は、正体不明の三代目という隙をついて、公事師仲間の承認が得られる三代目として、自分の次男坊のぼんくらを養子にねじ込もうと策をこらす。その間に飛車屋は三代目名代のお甲に公事で連敗して、ますます卍屋のっとりを急ぎ始める。つまり、偽百姓に架空の訴訟を起こさせて、勘定奉行所での吟味最中に対方の飛車屋が訴えた百姓達が架空存在だとあばき、偽百姓たちは止める間もなく奉行所からトンズラして行方不明になれば、卍屋の責任問題になり、闕所のうえ、江戸から所払いになりかけるのは必至。そこで、飛車屋が、まだ公事師仲間からも未承認(二代目が再起不能でも病気療養中)の正体不明の三代目を欠格として追放し、改めて自分の次男を婿入りさせて三代目とし、飛車屋が後見につくので卍屋を存続させてほしいと奉行に、公事師仲間(もちろん買収して)とともに訴えて卍屋を存続させる。つまり乗っ取ろうという絵を描いた。
卍屋との公事で負けて痛い目にあった江戸・関東裏社会のヤクザ・ゴロツキが飛車屋の作戦に全面協力して、お甲もこれまでと思ったところへ、トリックスターが躍り出る。
このトリックスターというのが、物語冒頭で卍屋の公事宿の手代チーム(もちろん率いるのはお甲)が、村同士の水争い公事の証人を江戸まで送り届けようとするのを強襲し、奪い返して、公事の証人出頭不可能に持ち込み、証人不在で論証不足だと公事をながしてしまおうという飛車屋の陰謀作戦暴力実行チーム(お甲に見破られて、逆襲されて失敗するのだが)に加わっていた流れの詐欺師の『いかさま師』。(なぜ「いかさま師」と呼ばれるかというと、やはり同じ闇討ちギャングに加わっていた用心棒浪人榊原が、名前なんか知りたくもないと「いかさま師」と呼び続けたことによる。)そのいかさま師がお甲絶対絶命の土壇場で、俺が三代目だと名乗り出て、飛車屋の仕掛けたヤクザチームを榊原の協力でぶちのめして証人として連行してきて、飛車屋の悪事を表に出し大逆転。こいつは何者と唖然とするお甲の前からイカサマ師はさっと姿を消してしまうのだが、シリーズ第一巻の最終章で、寝たきりの二代目の枕元へイカサマ師は現れる。
Kokokara-----------------------------------------
「さすがは甲太夫の親爺さんだ。寝ついていても、まったく油断はございませんねぇ」
「お前ぇか?・・・・・・」
「へい。手前でございますよ」
「・・・・・・いってぇ何をしに、江戸に戻って来やがった」
「へい。 お約束通りに、お甲ちゃんを守るために、戻ってきたのでございます」
「何が約束だ」
「おっといけねえ。手前なんかとくッ喋っていたら、お身体に障る」
to -----------------------------------------------kokomade.
地の文を略して会話だけ並べたのだけれど、このあと、
トリックスターいかさま師は、最後まで名前が明かされることもなく、
「案じることはございません。お甲ちゃんは、きっとあたしが守り立ててご覧にいれましょうから」
と静かにに障子をとざして消える。
まあ、実に二巻目が待ちきれないクロージングではありませぬか。

最後の一行はこうだ。

雪はしんしんと降り積もる。庭からは、なんの物音もきこえてはこなかった。

うわあああい、幡さん、幻冬舎さん、次を・・・・・次を、早く読ましてくれええええええええい。

015 警備会社で泥棒の侵入を食い止められる?

PCの現在のメインマシンであるThinkCentre_memory2G + XP32bitに最近挙動不審を感じ始めたので、つくも電気でAcerのAspire i-5-3210M 2.5Ghz_memory 8G + W7 64bit を手に入れた。
ま、近々でるW8は、たぶんいままでのMS社のOSの出来のリズムからすると、2000とかVista 同様にクズものそれなりのものと思われるので、このマシンが向こう5年ほどのエースマシンになるだろうと思ってます。
というので、7用の便利なノーハウや、知識を集めるために、アスキー.PC(ドット ピーシーと読む)と日経PCを立ち読みして、ひとつでも使えそうな記事があれば買うというのを二年ぶりにはじめました。
 そう、XPをもう少し長くでも使いたい人向けの記事なんか載ってたりしたら買いません。明らかに、XP用部品の在庫を売りつくすための提灯記事に決まってますから。XPの情報は、2年前ですでに書きつくされています。バックナンバーを揃えていたら、冷えた天ぷらの衣をはいで揚げなおしているとわかります。
 スマフォとかI-PAD提灯記事にも興味はありません。無線LANにも興味はありません。みんな、未熟技術商品の試作品を消費者に自腹を切って試用させるというPC/IT村のいつもの国際「陰謀」であると思っております。まあ、あと二、三年たってから試しても遅くはないと思うのは、PCつきあい20年弱の経験知恵ともうしますか。そこらへんは、中村正三郎さんの著書や記事、ブログを見つけて読んでもらうのが一番かな。
お金のある方はがんばって、技術製品を磨き上げてください。lolol.

 というわけで、アスキー.PCの9月号を650円で買いました。最近、お金にものを言わせて、自宅と現場にノートPCを一度に2台も買ったという同僚が、この手の雑誌って、こんなに高いの?!とあきれてましたけど、たしかに、厚さからみると高いのかも。lol

 買った理由は、シャープのCOCOROBO RX-V100というロボット掃除機の記事。
これは音声に反応して動いてくれるロボット掃除機で、自動でも勝手に動き回れるのだけど、そのカメラの目を通してラジコン風に操作運転ができるというしろもの。値段も13万円を200円切るというけっこうなお値段で、とても手がでないし、大体買えたとしても、もとい、だれかにプレゼントされたとしても、それが動き回れるような広い部屋に住んでるわけでもない。ま、箒一本で足りるレベルの暮らしなんで、個人的には無用の長物。でも、こいつを、部屋のドアの裏近くにおいておけば、掃除機内蔵のカメラが四方を撮影して、画像をスマートフォンに送ってくれるという情報が、買った理由。あと、数年したら、
ひょっとしてスマフォ使いにでもなってしまっていたら、ボーナスでも貯めて、この掃除機を買うのも悪くはない。

これだけなら、ミスパラの記事にはならない。この33ページに、こういう見出しがあった。
 自宅をIT化する話の中で、監視カメラとして役に立つといろいろ夢を見せてくれた後に各種の侵入感知器とその警報を中継してスマフォに送ってくれると「絵」ときした記事の端っこに小さなコラムがあって、その小見出しなんです。
「実際の進入を食い止めるには警備会社を利用する」

ここが問題、コラムの記事をよく読めば、普通の頭を持った人なら実際は食い止められないとわかるように書いてあるのだが、見出しで先入観を持たされて読んだら、機械警備会社と契約しさえすれば、犯罪を未然防止できると錯覚するおっちょこちょいもいるだろうと思うので、一言、注意喚起したいのですね。
 警備会社は、都内の場合、警報発報から15分以内に現場に到着すればいいのです。(25分以内の間違いでした。ごめんなさい)それを越えて遅れて到着して賠償問題になった、某芸能人の客を持っていた業界大手の会社は、事件当時はニュースになりました。
 15分25分以内に到着して、現場を確認して。。。
現在、リアルのプロ犯罪者は5分以内に屋内に侵入できないなんてことはありえないのです。5分以内に侵入して、5分以内で目標物をいただいて逃げ出すのが、普通の窃盗のプロのワークタイム。そのために彼らは綿密に下調べをします。
 つまり侵入の「未然防止」はできない。未然防止をしたければ、警備員を常時在中させる施設警備会社に頼むしかない。普通の家に警備員を常駐させるスペイスなんかない。機械警備会社というのは、異常発生した場合、それが犯罪ならば、なるべく早く発見して、警察に通報して、被害を最小限に食い止めることを業務としているのです。
つまり、この見出しは、
「実際の侵入を少しでも抑止して、被害を最小化したければ、警備会社を利用する」が正しい。
 普通の仕事をしてる人ならば、いつでも携帯電話に出られるわけでもない、あるいは、電話連絡があってもいつでも気づくというわけでもない。同じく、個人的ITで、家の異常をモバイル環境で知ることが出来るはずでも、その通報にすぐに反応できないことの方が多いはず。それに比べれば、発報すれば、必ず15分25分以内に現場確認する契約義務のある機械警備業者に依頼するほうが、早期発見と警察への通報による被害減少を図れるのは確実なのです。火事通報から、サイレンならして突っ走って5分で到着できる、消防署とは警備会社は違うとしても。
 ミステリ舞踏派なんかは、その予想被害金額は恥ずかしくてかけないくらいなもんで、費用対効果を考えるとなんにもしないのが上策・・・・LOLOLOL

009 英国メタボ防止学校給食の悲劇

まあ、ミステリ風の題名をつけたんだけど、痩せたいならイギリスの小学校で日本語講師の職を見つけて、生徒と一緒の食事をするという手がある。LOLOLOL

イギリスの9歳の女の子が自分の食べている学校給食を写真に撮って、ブログとして発表したら、そのあまりの貧しさに反響大、地方議会だかどこからかの圧力で校長は、彼女に給食写真をアップロードするのを禁止した。彼女が Goodbye という最終記事を書いたら、それに200万ものアクセスが寄せられて、ついには、政治問題化しそうになり、どこかわからぬ当局は校長に禁止指示を撤回するように命令するというドタバタが演じられた。彼女、ネットではVEGと名乗っていたのだが、Argyll and Bute CouncilのCllr Roddy McCuish氏の議会への勧告文の中で、Martha Payne という名前が明らかにされてしまった。
Veg-Martha の給食レポートは月曜日(日本じゃ火曜日)から再開されるそうな。

Marthaのブログ、Never Secondsには、世界中の小学生から、給食写真が寄せられて、これが、またおいしそうでヴォリュームもあるのだけど、イギリスの給食は、メタボアダルト出現防止のためと思われるが、これで足りるのかと思われる「貧しさ」です。うむ、第一次大戦塹壕戦線の食事へあと一歩という次元ですね。

最初のアップ給食は、ちいさなマフィン(直径3センチくらいか)一個、ピザ5センチ×10センチ、なんかの揚げ物(コロッケらしい)直径2センチで長さは3センチくらい。トウモロコシの粒が30粒(数えられるくらい)ちょっと。Vegも書いてる、わたしは成長中の子どもで、午後も集中力が必要なのに、(チビ)コロッケ一個じゃ無理よね。だれか、これで十分と思う人いる?
I'm a growing kid and I need to concentrate all afternoon and I cant do it on 1 croquette. Do any of you think you could?

この一食の予算は、2ポンドだそうな。250円か。高いと言われる日本の物価で、小売定価で食材をあつめても、100円かかるかどうかという内容ですね。でも、まあ、メニューはけっこうバラエティに富んでて、作ってる人も工夫をこらしているようですねえ。でも、食材調達費が、不経済に高いのかも。

6月5日は、Vegが手製のNori巻き寿司を作ってる。これが子どもらしくて、不恰好だけど、おいしそうです。つけあわせがチーズをちらしたサラダってのも、イギリスですねえ。この寿司、その前日、日本のMaiから送られてきた、彼女の弁当写真(多分母親手製)のペンギンおにぎりを見て作ってるんですねえ。

まあ、記事はこれ。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1206/18/news026.html

「貧相な給食写真を投稿する9歳ブロガーに禁止令 批判受けすぐに撤回
まずそうな給食の写真ブログで話題になっていた9歳少女が投稿禁止を言い渡され、ネットで批判がわき上がった。」

Veg−Marthaのブログは、これです。
Never Seconds

ちなみに、最初に父親からもらったカメラは一枚も発表しないうちに壊してしまった(壊れてしまったそうな。ひょっとして、ソニーかlololol)ので、二台目は、子どもに与えるなら防水耐衝撃のものがいいと、オリンパスのμTough-6020になったようです。なかなか、いい選択ですね。ソニーのTX-20 もいいと思うけど、ソニータイマーつきでは、ブログが一年で終わりそう。lololol. オリンパスタイマーの噂は聞かないから小学校卒業までは無理でも、三年くらいは給食写真が見られるかな。でも、オキナワの水辺で一度で浸水したってブログは読んだから、Vegがプールにつけないよう祈りませふ。

ぼくも、メインブログで「現場飯」のカテゴリをはじめようかな。もっとも、昼抜きダイエット始めて一月、やっと効果出てきたところだから、やっぱりやめておこうか。LOLOLOL.

007【私のミステリな日々】2012年4月中旬 岩澤紫麗、佐藤いづみ、カミムラ晋作

2月19日にノルウエーの知人が亡くなったショックで、感情と理性が混乱して、ただ身体を動かして飯を食べているという日々が、週を重ね、月々になりって、花の季節になって、ようやくMINDが元に戻った。。。ような気がする。
というので、書こう。
MEMENTO MORIの2月3月。 やはり、亡くなった作家を読み返していたのだけど、あんまり文字テキストの作家というのは、死んでもそれほどに思いいれが入ってないもので、マンガ家の方が心に残る。もう、旧聞に属するのだけど、和田慎二が亡くなったのはショックだった。ショックすぎて、追悼をまとめられなかった。でも、そろそろ、持ってるものは全部読み返したので、そのうち(いつものことで、いつ書くのかはわからないけど)書こう。
マンガというのは、絵が命でどんなに原作が良くても、絵がつまらなければ、作品として成立しないので、マンガの場合、作者名は作画家に統一しておきます。

カミムラ晋作「必蟲SWEEPERS 1」 原作(藤見泰高)、秋田書店、2010年、552円+税

大人のミステリが、情報小説の側面を持つものが多いように、マンガにも子ども用情報マンガにちかいものがある。子どもの、もしくは子ども並の(または、子ども以下の)大人をターゲットに《編集》という人種が企画を考え出していることが多いのじゃないかと舞踏派は想像しています。
これは、『虫』がテーマのミステリマンガ。小学校5年生の殺虫専門業者東雲信濃君が探偵役。半ズボンの小学生なのに、殺虫消毒業者を開業できるかどうか、税務署と保健所はどうしてるのかなんて、つっこみはいれないのがお約束。アシスタントも同級生の女の子。会社名は「必蟲スイーバーズ」。
最初のお手並み拝見は、シロアリ。大人の業者が立ち代り入れ替わり挑んでもなぜか駆除できない、シロアリ。日本在来種のシロアリではなくて、アメリカ・カンザイシロアリと識別して、「フェロモンを利用した最新駆除技術」をつかって駆除に成功した。でも、最新なだけに、全部自前で開発しなければいかなかったので、費用が1千万を越えて大赤字。小学生社長さんは、叫ぶ。「次の依頼はまだかっ!!」
次は、古着屋に蔓延っていたヒメマルカツオブシムシ。三番目は新種の蚊によるアナフィラキシーかと見えた事件は、実は被害者の過剰ダイエットによる免疫低下によるものと喝破して、解決するものの、駆除じゃなかったので、収入なし。この事件で小学生社長がスカートをはいて登場。女の子だったんだ。
4番目は、精子の匂いがする物質が女性の洗濯した下着や部屋のハンドルにつけられる事件が下着泥棒事件とともに多発。社長のブレーンの研究者が昆虫写真を街中で撮影しているところを不審尋問を受け、ついには容疑者として逮捕されて、その無実を晴らすというストーリー。犯人はミズアブ。ミズアブが、洗剤や柔軟財の芳香成分に誘引されて、あつまり産卵したものと警察立会いのもとで証明実験して、ブレーン(信濃ちゃんに言わせると僕)を救い出す。
ミズアブは、別名便所バチ。黒くて、大き目の蜂みたいで、けっこう線路際にも多いので、よくマクロ写真の練習台になってもらった。ずうずうしく逃げないから、撮り易いのですね。

佐藤いづみ「冷蔵庫探偵 1」原作(遠藤彩見)、徳間書店 2011年、562円+税

一話目は、「生姜葛湯と夫婦仲」 新米刑事(名前は記憶に残ってないので略)が大学時代の仲間の家でのパーティに出る。ケイタリング業者のレイコさんとそこで初めて出会うのだが、そこで、パーティ会場になった友人の妻が失踪する事件が起きる。口では愛妻家だという夫にレイコは冷蔵庫の中身を見て、忙しさにかまけて妻の手料理をほとんど食べていないと告発する。ケイタリングのオーダーの際の好み調べで夫が辛党とレイコは知っていたので、冷蔵庫に揃っている辛み調味料が中身が十分に残ったまま賞味期限切れになっていることとあわせ、そう推理したのです。妻は、甘等で、「甘いものは全部新しいし、手前に入っている」と、夫婦の味覚のすれ違いも指摘した。それで最後に、クリスマス用のクリームシチューの冷凍ものを取り出して言い訳し続ける夫に断言する。
「食事は一日3回。食事の不満や、寂しさも。 その分、溜まるのは早いよ」「夫婦二人なら特に」「つらいよ」
収納容器が一個だけ違うものがあることから、妻が近所に料理を更替しあう友人がいるに違いないからと言われて、夫は妻の家出先を見当つけて、妻を迎えにいって謝罪してハッピーエンド。
新米刑事はレイコとの別れ際に冷蔵庫プロファイリング能力を誉め、「あんた”冷蔵庫探偵”になれば」と薦めた。
ま、その後、上司から、新米ゆえの経験不足と論理思考訓練不足を指摘された刑事は、レイコさんに弟子入りしてケイタリングを手伝いはじめて、ここで冷蔵庫探偵はシリーズ化となるのです。LOLOLOL.

文章で読んでも十分に読めそうな原作を書いた遠藤彩見にテキストバージョンを期待して待つのもいいな。
他に、シイタケスープ、チェリージュビレ、チョコレートムース、にごり酒とタコの水煮の合計五話が入ってます。既に巻2も出ています。

岩澤紫麗「家電探偵は静かに嗤う 1」原作(藤見泰高)、秋田書店、2012年 552円+税

女暴力刑事が脇役で出てくる。脇役だし、一応グラマラスな美人なのも、少年コミック月刊誌連載ものなんだから当たり前である。キャロル・オコンネルのキャシー・マーロイみたいな美女暴力ハミダシハッカー天才刑事なら、名前を覚える価値もあろうが、脇役にすぎないので名前は忘れた。(マーロイはすごいもんね、容疑者に斧を振りかぶって、私が正義だって迫るくらいだもんね。マーシャルアーツで、あくまでも素手にこだわる女暴力刑事とは迫力が違うもんな)
主役は、家電修理屋の家山電。電はあかりと読む。二十代前半だろうと思う、オタクっぽいボサ頭の小柄なメガネ男。太ってはいない。ワンマン会社「瞬速家電修理社」を営む。ワンマンとは文字通り社員従業員経営者合計しても一人だけしかいないという究極の零細企業ということ。家電ものなら、パソコンから、セキュリティシステム、はては家庭電化初期時代の、製造販売会社すらなくなってるような古さのものでも全て修理して完全品に戻してくれるという会社。こんなので食えるのかというと、こんな感じのお得意様をいっぱい持ってるらしい。
「あそこはイイ映像機器が揃ってましてね・・・・・90年代を代表するすばらしいモニター”M2”があるんですよ。当時のVTRやLDを見るなら今の高解像モニターではなく当時のものが最適です。しかもあそこの音響システムは、当時流行のGoseじゃなくモニターと同じメーカーであるラムザを使っているのがぼくの好みで・・・・・・」
そういうものの調子が悪くなるとお呼びがかかるようである。
そういうお得意様の一人の老有名女優が自宅でVTR鑑賞中に、頭を殴られて負傷する事件が起きる。
女優のほかには同居者は一人しかいないメイドが疑われ、捜査当局も人使いの荒い性格のきつい女優の下でストレスが溜まったメイドの犯行説一色にそまるなか、女暴力刑事は、メイドの手の荒れを見て、一人だけ、こんな働き者が暴力事件を起こすわけがないと一人暴走捜査を始めようとするが、孤立。たまたま知り合った家山電と事件解決に乗り出す。ネタバレになるんでストリー解説はこの辺にしておきましょう。
テレビドラマの「探偵ガリレオ」シリーズなんかより、よっぽどしっかりした科学知識に裏打ちされてるミステリです。もちろん、その原作の人気シリーズ作品(以前読んだとき、ほとんど、事件描写の部分でそのトリックが分ってしまって、興ざめしたけど・・・・・つい一昨日、ソレ抜きにして物語の魅力あるかどうか、古本屋で買って再読したけど、昨日、即夢の島行きに・・・・)よりずっと面白いです。サービス部分の女刑事のコスチュームプレイの絵だけでも、楽しい。。。。おいおい。LOLOLOL.
古い家電は、日本には列島を埋め尽くしてもあまりあるくらいあるから、このシリーズ楽しみですねえ。
電みたいな若い友人、一人欲しいですねえ。(自分で直さんかい!)

008 上田早夕里「ラ・パティスリー」、畠中恵「アイスクリン強し」、よしながふみ「西洋骨董洋菓子店」

最近、明治時代ものは苦手になってしまった。歴史改竄が歴史の宿命みたいなものだけれど、この島国の保守化とともに、再び明治礼賛、現行保守構造の組み上がり期の合理化美化を意識的に支配する側・利権者側から仕掛けなおされているような気がする。マルクス史観による支配構造の分析・点検視点が崩壊したあと、ノーチェック状態で保守構造が暴走しはじめているような感じがするし、文化面でも、積極的に勝ち馬に乗って、利を得、一稼ぎしようというようなものが主流になっているように感じられるからだ。
そういうわけで、畠中の新作も腰巻読んだだけでは買う気になれないでいた。ところが、ひょいと、阿佐ヶ谷の古本屋で上田早夕里の「ラ・パティスリー」を見つけた。SFではない現代小説。13頁目まで読んで、お、これはミステリではないかと、即購入。これは読まねばならぬ。そういえば、畠中もケーキ小説の明治物を書いてたなと思い出し、棚をみたが並んでいない。それではと、同じ商店街の小さな本屋へ40歩ほど歩いてみると。あった。
で、二冊併読。
しかしである、この分野は、活字マンガを通して大傑作の化け物作品がある。よしながふみの「西洋骨董菓子店」。ついでに書いてしまおうというわけである。先に読み終えたのはアイスクリンの方。

畠中恵アイスクリン強し」講談社文庫 2011年 552円+税、単行本 講談社2008年

まあ、筋もへったくれももない、明治青春小説ファンタジイもので、元幕府側の士族の若様たちが、巡査になり、その友人の居留地育ちの西洋菓子職人の卵と、維新成金のお嬢様たちが、わいわいと集まって、明治初期風俗を見せてくれるコージーもの。おもしろいんだけどね、有明夏夫の海坊主の親方シリーズと較べると、なんか素人の作ったケーキを食わされているような違和感を感じるってのは、舞踏派が年とったってことかもしれない。
作品の中ででてくるケーキを福田里香さんが実作して写真に撮って、折り畳みの小パンフレットにして付録につけてくれているのだが、紙質をケチった(ひょっとして時代色を写真につけるつもりだったのかもしれない)せいかピントがボソボソでシードケーキも苺のアイスクリンもちっともうまそうに見えない。個人的に畠中は江戸ものにかぎる。

上田早夕里「ラ・パティスリー」ハルキ文庫2010年 280円、定価629円+税、単行本角川春樹事務所2005年

関西のケーキ屋の<ロワゾ・ドール>に就職したパティシェ見習いの森沢夏織の”甘い”冒険物語。森沢夏織という名前の響きから、上田さんのアサヒネットのミステリパラダイス会議室時代のハンドルネーム由梨を思い出してしまうというのは、何故だろう?かおり、ゆり、さゆりのり音韻のせいかなあ。

ま、その夏織さんが、見習いなんで朝一番出勤して掃除やらなんやらやろうと店に着くと、誰もいないはずの店に見知らぬ男が飴細工をを作っているのを目撃する。入り口のシャッターには鍵がかかっており、男は鍵を持っていなかった。裏口もあったが、そちらは、材料のダンボール箱が積み重なっていて、その重さで外からは、鍵を外しても開かない状態の上、ちゃんと鍵もかかっていた。おお、これは、逆密室である。
男は名前以外の個人的なことは記憶喪失になっていて、店のオーナーは紆余曲折のあと、彼をパティシェとして記憶がもどるまで使おうと決めた。男の菓子作りの腕は極上のプロフェッショナルであるのに、その正体を業界の誰も知るものがなかった。
彼の正体を彼とともに、夏織は調べるとともに、菓子作りも彼から習いだす。
うん、アサヒネットのミステリ・パラダイス会議室の「わたしのミステリノート」に残っているものの大半を書いてくださったミステリマニアの由梨さんこと上田早夕里さんらしい上品なミステリです。古城のかわりにケーキショップ、謎めいた領主の替わりにパティシェ。ゴシックロマンにも通じるミステリ本流の謎解き冒険物語です。チョコレートをめぐる店内コンテストなんて、少年漫画風挑戦者物語風味まである。

ミステリの味もいいけど、中に登場するケーキの描写がまた、いいんですねえ。10年以上前、関西に阿呆列車みたいに出かけていたころに、味見してまわった大坂・神戸のケーキが目の前、鼻先、舌の上によみがえるんです。フルーツロールの描写をちょいと書き写しましょう。
夏織が食べます。
kokokara------------------------------------P.50------------------------
まずは、イチゴが見えている部分を狙って、卵色のふんわりとした生地にフォークを入れた。一口含むと、とろけるような生クリームの舌ざわりと、イチゴの甘味と酸味、ふわふわした生地のおいしさが一気に押し寄せてきた。
koko------------------------------------------------------------------made.
ああ、あれだ。あそこの丸いテーブルで食べた、あの味だ。。。

よしながふみ西洋骨董洋菓子店 全4巻」新書館 定価530円+税 2002年

まあ、あまりに有名なケーキマンガである。財閥の孫オールマイティ男とその友人で「魔性のゲイ」の二人で始めた菓子店「アンティーク」を舞台につづられる物語。元世界チャンピオンで網膜剥離で20にしてボクサーを隠退せざる得なかったハンサムボクサーの見習いに、長身二枚目で外見は有能だが、実は人柄以外は無能の独活の大木という二人が加わって、一人一人の人生模様を4巻にわたってツヅレ織。最終巻では、過去に少年誘拐事件の被害者だったオーナー店長が、現在の少年誘拐事件を解決するというミステリ味までくわわるケーキをめぐる人間喜劇。

まあ、パチンコ業界に天下りしたキャリア警察官僚が、誘拐殺人事件の少年の胃の中の残りの分析から、これは、アンティークのケーキであるとケーキ探偵ぶりを発揮するのはご愛嬌といいますか。
舞台が阿佐ヶ谷というのも、舞踏派=Cakeater にとってはうれしい、なつかしくて、ちょっぴり哀しい(どうみても、今は閉店して久しいEau d'or と、 最近店舗縮小したSugar Roseをミックスしたようなアンティークの店の佇まいだから)年に一度は引っ張り出してしまうマンガです。

ああ、EAU D’ORのケーキ、食べたいなあ。。。
このミステリがすごい。。。にもケーキ物が合ったけど、ミステリの出来不出来は別にして後味が悪過ぎるんで書く気はない。この三人の著者みたいにケーキが好きな人のものは大好きだけど。
また、稿を改めて[cuisine]で書こう。

013 高橋由太「つばめや仙次 ふしぎ瓦版」、永尾まる「猫絵十兵衛 御伽草子 3」、岩合光昭「ネコを撮る」

5日の午後に駒込の仕官先に師走の書類を届けたあと、駒込停車場内の本屋をのぞいたら、永尾まるの絵が眼に留まった。文庫の表紙で江戸の優男の肩で足袋足の黒猫が緑の目を光らせている。長着の柄は百鬼夜行で、轆轤首に火炎傘の瓦版が猫と着物の間に張り付いて、そこから伸びたろくろ首女が、縦縞を尻はしょりした狐と話をしている図。ちゃあんと、永尾まるの初期キャラクタのサンショウウオも墨染めの衣に木魚の撥をもって描かれてある。あ、これは、買い。
買ってから作者名を見た。

高橋由太「つばめや仙次 ふしぎ瓦版」光文社時代小説文庫 2011年、税込み500円

文庫書き下ろしである。それにしても薄い。207頁である。これでは、長距離列車に乗るには不足にちがいない。ワンコインで買えるというのは、いかにも停車場本屋の品らしくていいけれど。
薬種問屋つばめやの次男坊の仙次は、道楽に『ふしぎ妖しや怪しの瓦版』を出して自分で売り歩いている。いつのまにか本所深川名物のひとつに数えられるようになって「つばめや仙次」と呼ばれて町人たちのお気に入り、アイドルになってしまった。用心棒友人がついていて辻風梶之進という『本所深川で』『敵なしの剣術使い』と呼ばれている辻風一刀流道場の若先生である。この二人の寺子屋仲間どころかおむつをつけているころからのつきあいの「深川小町」のお由有が主人公グループ。後見人はお由有の父親の町医者宗庵。
事件は、宗庵が助からぬと見立てて治療はしたが死んだ武家の跡取りが、拝み屋の八兵衛によってよみがえったために、宗庵は藪という噂が広まって、患者が去ってしまい休業状態というもの。宗庵は、長い人生でこういう休日の日々もまたよしと達観してるが、家計を預かっているお由有からするとそうもいってられない。その拝み屋が橋のたもとで武家に襲われていると駆け込んできて、仙次と梶之進が飛び出して助ける。。。梶之進は想い人の親父殿のライバルをぶった切るつもりでいたのに、複雑な物語の進行具合。
よみがえった死童と拝み屋の情報をもとめて、仙次は『鬼一じいさん』を「本所深川の外れも外れ」の百姓の元納屋に訪ねる。その飼い猫の元孤高の野良猫『猫ノ介』も爺さんも仙次同様の深川名物の一つなんですね。この爺さん、酒と女にしか興味をなくしたわけあり人生の達人にして、鬼一法眼流の超人的達人。その爺様は、おみよという夜鷹女郎とくらしていたが、聞くつもりの話はろくに聞けずに、実家の台所からくすねてきた兄の高い酒を一升のまれただけ。(ここらへんは、シリーズ一巻目なんで登場人物紹介のエピソードが延々続くわけですねえ。もっとも、こういう豪傑紹介編が物語では一番楽しいところなんですが)
そのうち、八兵衛とお由有が、件の旗本屋敷に拉致されたというので、この三人組がほとんど殴りこみ同然におしかけるが、この旗本も馬庭念流皆伝者というので、ほとんど膠着状態になったところに、この裕福な旗本家乗っ取りを企む悪人旗本一家が登場、敵も味方もあわや悪人の銃の餌食になりかけたときに、まず猫ノ介がその反攻一番槍ならぬ、一番爪を立て、梶之進と鬼一爺さんのダブルアタックで悪人は退治されるのです。その間、タイトルロールの仙次は何をしてたかというと、この二人に殺陣はまかせて、周囲観察しながら、謎解きの脳細胞作業。
よみがえった跡取りの「おいら」という言葉から、仙次は謎を解いてしまう。八兵衛の本当の姿は「人買い」で、その背後には、農村部の飢饉と子殺しがあったという歴史の暗黒面はさらりと絵解きして、悪人旗本や、武家の極道息子族はぽきんぽきんと骨を折られて退治され、めでたしめでたしのお正月。(文庫書き下ろしがでたのは七月だったけど)
あ、武家の子どもは、「おいら」じゃなくって「われ」って呼ぶらしいです。畠中恵の「こいしり」で知ったのですが。

永尾まる「猫絵十兵衛 御伽草子 三」少年画報社 600円+税 2010年

「ねこパンチコミックス」の一冊で、連載されてたのはコンビニで売られている「ねこパンチ」というねこマンガ専門月刊誌。岩合光昭猫写真の見開き折りが見たくて買ってるうちに、中毒したのが、猫絵師十兵衛と猫又仙人ニタ公のコンビの時代マンガで、もうすでに4巻が出て、近く5巻目もでるとか。
猫絵師というのは、江戸の路上芸人で、ネズミよけの猫絵を売って歩く坊主姿の乞食にちかい芸人だったようですが、十兵衛は、現代風の頭で背中の笈にニタ公をしょって、江戸の町を歩いてるのですね。十兵衛の長屋の炬燵にはいったニタ公は、「朝っぱらから酒かっくらって黄表紙読んでる猫がいるか!!」と掃除の邪魔だから炬燵から出ろという十兵衛に、重さ30キロはありそうな麻呂眉のニタ公は「ここにいますねー。冬の猫の定番っちゃあ炬燵でゴロ寝だろーが 俺をよけて掃除しやがれ にょほほほ」というような暮らしぶり。住んでる長屋も、全ての家族が猫を飼っていて、自由に猫は長屋中をあるきまわり、半分野良猫みたいな猫たちという、猫天国長屋なんですが、そこへ間違って入居してしまった、父について修行時代にニタ猫又仙人に脅かされて猫恐怖症に陥ってた剣道場の師範代西浦すら仔猫のトラ助を飼い、魚採り名人猫の耳助におしかけ居候されて、ともかくも二匹の猫のオーナーになってしまうような長屋なんです。
そこで展開される猫をめぐる御伽噺(ファンタジィ)で、永尾まるの独特な絵が不思議に江戸情緒とぴったり合って、何度でも繰り返し眺められるマンガになってるのですね。
ええい、ついでに岩合さんも書いちまえ。お正月だ。

岩合光昭「ネコを撮る」朝日新書33、720円+税、2007年 朝日新聞

腰巻が全てを語っている珍しい傑作。曰く、ネコのことならイワゴーさんに聞け!!ネコを撮ると健康になれる!!

日本のネコと犬の数はほぼ拮抗していて1300万匹だそうだけど、ブログや投稿の写真の数は7割がネコなんだとその序文で紹介されている。
まず1.早起きしよう。(ネコは朝早く動き出す)
その2.撮影準備体操としてネコにあいさつしよう。(うむ、撮る前に挨拶するのだという。それも人間語でである。ネズミ鳴きで挨拶してる猫撮り久光なんかは、人生態度から改める必要があるなあlolol)当然、出会う人たちにはネコより先に挨拶が必要。飼い主なら、事前挨拶は必須とのこと。外国だと、その国のことばで、「私は怪しいものではありません」と現地人にあらかじめ書いてもらった紙を常時携帯するのだとか。
その3.岩合さんは書いてないけど、この人のネコ写真はあきらかに地面に寝そべり腹ばいになって撮っている。ということは、地面に寝転べる服装が撮影服であるということになる。
その4.撮る側としては、緊張しないこと。そう。。。おっ、と身構えると殺気が出るから、敏感な生き物や人はソレと察して警戒から逃走もしくは、人の場合だと仮面防衛、ひょっとすると、なんやこら!勝手に撮んな、じじい!となるもんな。
その5以下もあるけど、きりがないのでやめておこう。この本は紹介ですまさずに読むべき一冊なんです。
でも、腰巻のネコを肩に乗せてわらっている岩合さんの写真、いいですねえ。うらやましいなあ。